
以前から使用していたサブPCのCPUを「安いIntel CPUならこれを選ばない手はない」といわれていた、「Pentium Dual-Core G4560」に載せ替えた。このG4560が注目される理由は、「PentiumなのにHT(ハイパースレッディング)に対応しi3に近い性能を持ちつつ、しかも価格は大幅に安い」という圧倒的なコストパフォーマンスの高さにある。
現行の第8世代(Coffee Lake)では、CPUの仕様が変更されi3シリーズも4コアとなったが、それまでの世代では2コア4スレッドが標準的なスペックだった。つまり多少の違いはあるものの、端的には「1万円を大幅に割る価格で買えるCore i3」といった存在なのだ。
![]() | Intel CPU Pentium G4560 3.5GHz 3Mキャッシュ 2コア/4スレッド LGA1151 BX80677G4560 【BOX】 |
載せ替える前のCPUは「Pentium Dual-Core G4400」で、世代的には1つ前のSkylakeとなっており、クロックも多少低いがとにかくHTに対応しておらず、2コア2スレッドだったのが大きな違いだ。サブPCなので、そんなに重い処理をさせることは多くなかったのだが、やはり大きめの画像を複数枚処理するときなどは、「それ以外のソフトの動作がほぼ止まる」といった状態になることもあった。どうせ安価でアップグレードできるのだから、載せ替えてみたというわけだ。
というわけで今回は、Pentium G4560を載せ替え前のG4400と、さらに同じ2コア4スレッドのモバイル版CPUである「Core i3-7100U」とベンチマークで比べた上で、実際の使用感について書いてみたい。自分と同じようにPentiumや、さらに安価なCeleronなどからアップグレードを考えている人は、参考にしてみてほしい。
- 製品の仕様情報 - Intel® Pentium® Processor G4400 (3M Cache, 3.30 GHz)
- 製品の仕様情報 - Intel® Core™ i3-7100U Processor (3M Cache, 2.40 GHz)
「Pentium G4560」ベンチマークスコア
まずは今回比較する「Pentium G4560」「Pentium G4400」「i3-7100U」のスペックをまとめておきたい。表にすると以下のとおり。
- | Pentium G4560 | Pentium G4400 | i3-7100U |
---|---|---|---|
世代 | Kaby Lake | Skylake | Kaby Lake |
最大クロック | 3.5GHz | 3.3GHz | 2.4GHz |
コア・スレッド数 | 2C4T | 2C2T | 2C4T |
L3キャッシュ | 3MB | 3MB | 3MB |
内蔵GPU | HD Graphics 610 | HD Graphics 510 | HD Graphics 620 |
GPUクロック | 350MHz - 1.05GHz | 350MHz - 1GHz | 300MHz - 1GHz |
対応ソケット | LGA1151 | LGA1151 | オンボード |
TDP | 54W | 54W | 15W |
プロセスルール | 14nm | 14nm | 14nm |
参考価格(ドル) | 64ドル | 64ドル | 281ドル |
見てのとおり、元々モバイル版でTDPやクロックがまったく異なる7100Uを除けば、G4560とG4400はHTの有無とクロック差が大きな違いと言える。世代は違うがソケットは同じなので、マザーボードのBIOSをアップデートすれば、多くの環境で「そのまま載せ替えて動作する」だろう。実際に自分の環境でも、CPUを入れ替えただけで動作した。もちろん、OSの再インストールなどもおこなっていない。
それでは本題のベンチマーク結果の検証に入りたい。今回使用したのは自作PCで、簡単なスペックをまとめると以下のとおり。
CPU | Intel Pentium G4560 / G4400 |
---|---|
マザーボード | ギガバイト GA-H170N-WIFI (Intel H170) |
GPU | オンボード |
メモリ | DDR4 2133 4GB×2 (8GB) |
ストレージ | crucial CT250MX200SSD1 (250GB) |
i3-7100Uの方はWindowsの2in1タブレットで、機種はASUSの「TransBook T304UA」。こちらのスペックは以下の公式ページを見て欲しい……のだが、実は自分が所有してるのは「T304UA-GN052T」という一部量販店の専売モデルと思われるもので、ASUSのサイトには掲載されてない。
通販ページになってしまうがスペックは以下で確認できるので、興味がある方は参照のほど。簡単に違いをまとめておくと、CPUはi3-7100Uだが、ストレージが256GBとなっており、画面の解像度も2880×1920となっている。
使用したベンチマークソフトはCPUの換装ということもあり、ゲームやストレージ速度系は含まず手軽にCPUやシステムの速度を測定できるものを選択した。具体的には「CINEBENCH R15」「CrystalMark 2004 R7」「Windowsエクスペリエンスインデックス」(フリーソフトで結果を画像出力)、そしてCPU-Zにもベンチマークモードがあるので、これを追加した計4種類。とはいえ数値的に一番わかりやすいのは、恐らくCINEBENCHとなるはず。
早速結果だが、以下のようになった。
CINEBENCH R15

- | Pentium G4560 | Pentium G4400 | i3-7100U |
---|---|---|---|
CPU | 378 | 271 | 253 |
CPU (Single Core) | 148 | 141 | 99 |
OpenGL | 33.00fps | 29.90fps | 34.57fps |
CPUのベンチマークとしては超定番のCINEBENCH。シングルスレッドの能力にはG4560とG4400の間に大きな差はなく、基本的にはクロックの違いのみだと思われるが、マルチスレッドではG4560が約1.4倍のスコアを叩きだしており、HTの効果の高さがうかがえる。ベストケースではこれぐらいの性能向上が見込める、ということになるだろう。
7100Uは元々モバイル版という位置づけであり、クロックとTDPの両方が低いせいか2コア4スレッドながらG4400よりも低いスコアにとどまっている。ただ、内蔵GPUのIntel HD Graphics 620はこの中で一番高いスコアとなっていて、一矢報いた形になっているだろうか。
CrystalMark 2004 R7

- | Pentium G4560 | Pentium G4400 | i3-7100U |
---|---|---|---|
Mark | 225104 | 186739 | 163586 |
ALU | 52490 | 37542 | 36309 |
FPU | 43384 | 23830 | 29604 |
OGL | 15017 | 14060 | 10186 |
総合系ベンチマークとしては相当に古いCrystalMark 2004だが、実は2017年に更新されていて最大32スレッドに対応するようになっている。とはいえ、今回のラインナップでは4スレッドまでのCPUしかないので、直接関係はない。
内容はCINEBENCHを踏襲したような結果になっており、「Mark」では1.2倍程度のスコア差が出ている。動作クロックが高くHT対応しているスペックの違いが、そのまま結果に出ているということなのだろう。
7100Uはこちらもあまり振るわないが、実はD2Dがエラーで正常に完走しなかったというトラブルもあり、数値は参考程度に見て欲しいところ。ソフトの基本設計自体が古いので、恐らくスケーリング周りで問題が出ているのではないかと思われる。
Windowsエクスペリエンスインデックス (ExperienceIndexOK)

- | Pentium G4560 | Pentium G4400 | i3-7100U |
---|---|---|---|
プロセッサ | 8.8 | 8.7 | 8.7 |
メモリ (RAM) | 8.8 | 8.7 | 5.9 |
グラフィックス | 5.4 | 5.2 | 6.1 |
プライマリハードディスク | 8.2 | 8.2 | 8.1 |
OS標準のGUIが提供されなくなったものの、Windows 10でも引き続き利用可能なWindowsエクスペリエンスインデックスでは、以上のような結果になった。元々細かい情報は分からないベンチマークなのだが、スコア自体はG4560がトップとなっており、やはり性能が向上していることがうかがえる。また、グラフィックスのスコアが一番高いのが7100Uである点も共通している。
なお表に「ゲーム用グラフィックス」がないのは、Windows 10では測定されず「0」か「9.9」になってしまうためだ。
CPU-Z

- | Pentium G4560 | Pentium G4400 | i3-7100U |
---|---|---|---|
CPU Single Thread | 375.2 | 392.2 | 243.5 |
CPU Multi Thread (Multi Thread Ratio) | 1052.7 (2.81) | 780.8 (1.99) | 713.5 (2.93) |
CPU-Zのベンチマークは、今までのスコアと違うところが目立つ結果となった。クロックがより高いはずのG4560のシングルスレッドの値が、なぜかG4400より低い。マルチスレッド性能は順当なスコアになっているため大勢に影響はないが、何となく気持ち悪い結果ではある。
とはいえ、CPU-Zは本来ベンチマークソフトではなく、自分も「そういえばCPU-Zにもベンチ機能があったな」と思い出してやった程度。あくまでおまけ機能として考えれば、こんなものかもしれない。
実際の使用感としても、性能に余裕ができてストレスを感じることが減少。画像変換も快適に
ベンチマーク結果としては「HTへの対応により、マルチスレッド環境での大幅な性能向上が見られた」とまとめられるだろう。「スレッドが2倍なので性能も2倍」……とは当然いかないが、ベストケースでは(クロック向上も含めて)1.4倍のスコアとなっているのはインパクトが大きい。実売では価格差があり世代も違うものの、G4400と同価格帯の製品とは思えないほどの性能の違いと言ってもいいはずだ。
実際に使用していても、明らかに「CPUの処理能力に余裕ができた」と感じることが多く、例えば画像処理に複数スレッドが使われても、他の作業がそのまま続けられるのが嬉しい。やはり2スレッドと4スレッドは大違い、というわけだ。
気になる点としてはやはり性能が向上しただけ、発熱量も多くなっていると思われるところ。G4400のころと同じように、G4560でも付属の標準CPUクーラーを使用しているのだが、(個体差もあるかもしれないが)今度のCPUクーラーは少し耳障りに感じることがある。見た目の違いはないのだが、風切り音が強めに感じるので、ファンの回転速度が高めになりがちなのかもしれない。
とはいえ若干低下した静音性を除けば、このアップグレードは大成功であったように思う。対応マザーボード(x170やx270シリーズ)を所有しており、HT非対応のPentiumやCeleronを使用していて性能に不満があるなら、「とにかく手軽なアップグレード」として最適で、そのコストパフォーマンスの高さは評判どおりといえる。個人的にもかなり満足しているし、正直かなりおすすめできる一品だ。
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