
ゲーム情報サイトの4Gamerでハードウェアのある記事を読んでいたら、気になる一文が出てきた。記事はIntelの新CPU「Core i7-8700K(とi5-8400)」のレビュー記事なのだが、それと同時に登場したIntelの新チップセット「Z370」の説明部分で、こんな記述があったからだ。
一方,組み合わせられるZ370チップセットのほうだが,正直,Z270との間に違いを見出すことができていない。チップセット側でサポートできるPCIe Gen.3レーン数は24で変わらず,Serial ATAやUSBのポート数にも変更はないようだ。
微妙な違いとして,SSDをHDDのキャッシュとして設定するSmart Response Technologyがなくなり,代わりにOptane Memoryのサポートが入っているので,その点は「新しくなっている」と言えるものの,基本的にはほとんど同じという理解でいいのではなかろうか。
「Core i7-8700K」「Core i5-8400」レビュー。第8世代CoreのデスクトップPC向け6コアモデルはどれだけ速いのか - 4Gamer.net
強調している「Smart Response Technologyがなくなり」という部分が問題のところで、自分はこのISRTの機能を使用しているし、かつて記事も書いている。端的にこれは「SSDをキャッシュにしてHDDを速くする」システムで、自分の環境ではゲームをインストールしたHDDにこれを使用している。知名度は低いし、実際に使っている人はかなり少ないだろうが、手元に余っている(低容量の)SSDがあるなら、実質的に予算ゼロで劇的にHDDの速度が上げられるからだ。
もしPCの更新や買い替えなどでチップセットがZ370になった場合、ISRTが使えなくなるのは困る。それに最新チップセットでサポートを切られたなら、当然次のチップセットでも機能はオミットされる可能性がかなり高いはず。気になるので、情報をちょっと調べてみた。
結論から書くと、確かにIntelの公式ページからは記述が消えている。ひとつ前のZ270にはISRTの項目(記述)があるのだが、Z370にはない。それぞれの仕様ページにリンクを張っておくので、気になる人は確認してみて欲しい。
とはいえこれでは単に記述が消えただけで、実際は何事もなく使える可能性も残っている。項目があって非サポートと書いてあるなら確かに使えないと思うが、今回は項目ごと消えていて、機能が消えたのかについては明確ではように見えるからだ。
「実はZ370でも、まだISRTは残っているかもしれない」と考える理由は他にもあって、Z370のマザーボードの仕様表に対応する旨が書いてあるページがあるのだ。具体例であげれば、ASUSの以下のモデルがある。
上記のモデルには「Supports Intel Smart Response Technology」と記述されていて、誤植やミスでなければ、ISRTに対応していると考えるべきだろう。
とはいえ、この記述には注釈が付いていて、それには「This function will work depending on the CPU installed.」と書いてある。動作するかは搭載するCPUに依存する……という風にも読めるが、Z370は第8世代の「Coffee Lake-S」にしか対応しておらず後方互換性はないため、「旧モデルのCPUを使えばOK」といった話ではないはずだ。
Z370チップセット搭載マザーボードにKaby Lake-SやSkylake-S世代のCPUを差すことはできるものの,やはり利用はできないという。
「Core i7-8700K」「Core i5-8400」レビュー。第8世代CoreのデスクトップPC向け6コアモデルはどれだけ速いのか - 4Gamer.net
IntelはZ270の世代から、新しいSSDキャッシュ技術として「Optane Memory」を採用し、これを推すようになった。これが登場したことで、話題にならなくなったISRTをアピールする必要がなくなり、結果記述が消えた……というだけではなかろうか。実際に最初の方でリンクしたIntel公式の仕様ページでも、ISRTの項目が消えた代わりに、Optaneの項目が登場している。
「Optane Memory」では、ISRTの代わりにはならない
上述のとおり、Optane MemoryはISRTと同じSSDのキャッシュ技術だが、同じものではなく「SSDをSSDで高速化する」ことも可能だという。理由は使用するのが通常のSSDではなく、根本的に種類が違うキャッシュ専用の「3D XPoint」という技術を採用したSSDだからだ。
OptaneメモリーとはIntelとMicron(日本ではCrucialブランドのSSDやメインメモリで有名です)が共同で開発した高速メモリー技術「3D XPoint」を採用したSSDの事です。OptaneメモリーはSATA接続のHDDやSSDを高速化するキャッシュメモリーという位置付けとなっています。3D XPointは従来のSSDで採用されてきたNANDフラッシュよりもランダムアクセス性能に優れており、かつ耐久性も向上しているため、キャッシュメモリーとして使用するにはNAND型SSDよりも適しています。
つまりISRTのように「余ったSSDでデータ(ゲーム)用HDDを高速化する」ということはできないし、そもそも現状ではシステムドライブ(つまりCドライブ)しか高速化できないらしい。今時システムドライブをHDDにしているのは、自作PCではあまりない構成だろうし、自分のように「システムはもちろんSSD。容量の関係でゲームは別のHDDに入れていて、これをキャッシュで高速化したい」という場面で使えないのは痛い。また、細かいところではキャッシュの最大容量が32GBと、ISRTよりも少ないのも気になるところだ。
現在のところ、OSの起動ドライブ(Cドライブ)にしかOptaneメモリーを適用することができず、拡張ドライブ(Dドライブなど)には効果が乗りません。
というわけで、SSDが近い将来暴落して本当にHDDと変わらない価格まで落ちない限りは、ISRTが使えなくなるのは困ってしまう。探した限り「Z370でISRTが使える/使えない」といった、直接的な記述はこの記事を書いた時点では見つからなかった(が、個人的には使えるような気がしている)。日本でCoffee Lake-Sが発売され利用者が増えて、この辺りの明確な記述が出てくることを期待したい。
ページ下部のコメント欄に、実際にZ370チップセットのシステムではISRTが使用できなかった、との情報が寄せられました。また、2018年2月現在では、「Optane Memoryはシステムドライブにしか使用できない」という仕様も変わらないとのこと。ISRTを使ってSSDをHDDのキャッシュに使うには、x270以前のチップセットを使うしかないというのが現状ということになりそうです。
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