
「テレビの設置場所と違うところで音声を聞きたい」という目的から、いわゆる「手元スピーカー」というものを買ってみた。入手したのはオーディオテクニカの「AT-MSP56TV」というモデルで、モノラルスピーカーながら5mの長いケーブルを内蔵する、電池式のアクティブ(アンプ内蔵)スピーカーだ。
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手元スピーカーと呼ばれるハードにはいくつか種類があって、大まかに「オーディオと電源ケーブルが無線か有線か」といった違いで分けると理解しやすい。完全無線タイプだとオーディオデータはBluetoothか2.4Gzhの周波数帯を使った独自形式(ちなみにこれはBluetoothやWifiと同じ)で伝送して電源はバッテリー内蔵、両方有線だと3.5mmステレオミニプラグケーブルと、ACアダプタが付属しているというのが一般的のようだ。ただし種類としては、今回買ったAT-MSP56TVと同じように、音声は有線、電源は電池(かバッテリー)というタイプが多い。
ちなみに完全無線タイプとしては、例えば以下のようなものがある。オーディオデータはBluetoothで送るため、もちろん普通のBluetoothスピーカーとしても使える。
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今回自分がケーブルを気にしなくていい完全無線タイプを選ばなかったのは、全体的に価格が高めというのもあったのだが、一番の理由は遅延が嫌だったからだ。Bluetoothを使ったタイプはaptX(理想を言えばaptX Low Latency)に対応していなければ、明らかに画面とのズレが認識できてしまって、違和感を覚えてしまうことは避けられない。
ところが手元スピーカーとして売っている製品をチェックしていても、aptXの文字が書かれていることは少ない。テレビ(というか動画)を見るなら、映像と音声がずれてしまうのは控えめに言ってもよろしくない。少なくとも自分の感覚では、絶対に避けたいところだ。
テレビに繋いで使う上にネットで買うのだから、実際に遅延するか試聴して買うなど不可能。となると安くて音声がずれる可能性が明らかに低い、有線タイプを選んだ方がいいだろう……と思っていくつかの候補の中で選んだのが、今回のスピーカーだ。Amazonではさらに安いJVCの以下のスピーカーが人気なのだが、以前買ったイヤホンに満足して個人的に信頼感のある、オーディオテクニカ製の方がいいのではないかと思ってこちらを選んでいる。
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実際に使ってみると、懸念していた遅延はほとんどなく、テレビとスピーカーの両方から音を出しても違和感は特にない。当然映像との同期も問題ないし、有線接続なので無線と違って電子レンジなどとも干渉しない。
置き場所によってはケーブルが邪魔になることもあるだろうが、そういうシチュエーションでは完全無線タイプを選びたい。
電源は単三電池4本となっていて、これはエネループのような充電池も使えることがメーカーによって明記されている。自分の環境では使い古したエネループを入れて使っているのだが、1日3~4時間の使用で1か月弱ほど連続使用できたので、電池の持ちも悪くないように思う。ただ、通常の電池ではやはり勿体ないと思うので、使用頻度が高いなら充電池を使った方がいいだろう。
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音質に関しては正直なところテレビと大して変わらないレベルで、率直に言えば良くない。いわゆる「安いスピーカー」の音だ。サイズからするともう少し音が良くてもいいような気がしないでもないが、価格が価格だけにあまり文句を言うのもあれだろう。そもそもこのスピーカー自体の設計が、「テレビの音(特に人の声)を手元で聞けるようにする」というものだから、音質は二の次でもしょうがないところだ。
音量にしてはかなり大きくすることが可能で、通常の用途ならボリュームを半分(50%)ほど回せば十二分のはずだ。最大値は大きすぎて、室内だと使う機会はまずないと思われる。自分の環境では、大体40%ぐらいで使っている。
一体化している音声接続ケーブルの長さは5mと他社製品と同程度だが、多くの環境で余裕がある長さだろう。余った部分は本体の後ろに巻いておけるため、邪魔にはならない。また足りない場合は、延長ケーブルを使えばいいだろう。ケーブルの太さ自体は細めで全体的に頼りないが、少なくとも1か月半ほど使用した限りは、断線してしまうようなことは起きてない。出来れば取り外し可能で好きなケーブルを使えれば断線も怖くないのだが、さすがにそこは望みすぎだろうか。

少し物足りなかった音質を除けば、安価な価格、十分なケーブルの長さ、長時間持つ電池、イヤホン端子ありと、全体的な満足度は高いスピーカーだった。「テレビの音を手元まで持ってくる」という目的は十分に果たしてくれている。実売価格は2000円強なのだが、価格分の価値は十分にありそうだ。モノラルになってしまうが、スマートフォンなどを繋げて音楽を流すことも可能だ。
「いい音で目的の音を聞きたい」という人には向かないが、「手元スピーカー」が欲しい人には十分なはずで、結構オススメの一品だ。
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