
自宅内の有線LANのケーブルレイアウトを一新する必要が発生したため、この機会に道具を買い、「LANケーブルの自作」を試してみることにした。結構な数のケーブルを配線し直すことになるため、「好きな長さのケーブルを必要な数だけ作れた方がいいのでは」と考えたからだ。しかもネットではこの手のLANケーブル自作キットが非常に安く販売されていて、かしめ器具やテスターなどのフルセットがなんと2000円以下で売っていることも珍しくない。自分も最初、この手のやつを買おうと思っていた。
![]() | 変換名人 LANケーブル作成セット CAT5用 圧着工具/皮むき工具/テスター/RJ45プラグ/ケーブル入 LANSET/1 |
しかし、やはり評判としては「安いものは安いなりの出来」という感じで、作りは良くないようだ。単に安っぽいだけならまだしも、「すぐ壊れた」とか「正常に作れなかった」という体験談も多く、安物買いの銭失いを地で行く場合も多い様子。考えた結果、そこそこ評判がいいものをバラで購入した方が良さそうと判断。具体的には以下のようなラインナップになった。まずはそれぞれ簡単にレビューしてみたい。
![]() | SUNKIT SK-868DR LANコネクタ圧着ペンチ RJ45/RJ11 (8P/6P)かしめ工具 ゴムグリップ ラチェットELECOM型 |
コネクタを“かしめる”ための、一番肝心な道具。コネクタとケーブルを圧着させて、LANケーブルとしての機能を持たせる。有名メーカーが販売しているものと同じ(OEM品)か、あるいはコピー品という話もあるが、実際のところは不明。パッケージ自体は中国語満載で、かつ清掃が不十分なのか本体にグリス(油)が結構付着していた点が、気になると言えば気になる。
製品としては(簡易的だが)ラチェット機能付きで、かしめ作業を始めると逆戻りすることはなく、最後までしっかりと押し込むことができた。比較対象は手元にないものの、ケーブル自作初心者の自分でも特に不良品はできなかったので、ものとしては悪くないのではなかろうか。
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自作したLANケーブルのコネクタを差し込み、正常に通信(通電)するか確かめるテスター。何が高級かわからないが「高級LANケーブルテスター」がいちおう製品名のようだ。こちらもパッケージ・説明書とも中国語(と英語)だらけで、とても日本人にフレンドリーとは言えないが、もの自体は問題なく、9V電池さえ入れれば普通に使える。
テスターなので必須というわけではなく、実際の機器に繋いで確かめてみる手もあるのだが、ケーブルを作成した直後にテストして不良かどうか確かめられるのは便利。なお、電話線(RJ11)もいちおうチェック可能だが、別のコネクタがついているのではなくて、おまけみたいな簡易アダプタで半ば無理矢理繋ぐだけなので、実用に耐えるとは言いがたい。あくまでLANケーブル用。
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ケーブルの皮むき機能と、壁に埋め込むタイプのLANモジュラージャックにケーブルを押し込む機能がセットになった器具。LANケーブルを作るだけなら、皮むき機能しか使わない。大概のかしめ器具にも皮むき機能がついているが、自分が使った上記の器具は深く切れすぎて内部ケーブルを傷つけることがあったので、こちらを使用した。こちらはきれいに皮だけむけて、内部のケーブルは問題なし。
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コネクタとコネクタカバーがセットになったもの。100個も入っているのでお得感はあるが、セット品のわりに両者の相性はいまいちで、カバーが完全に奥まで入りきらず収まりが若干悪い。実用性には特に問題なく、RJ45コネクタ自体の出来は悪くないようなので、カバーはおまけだと割り切ればいいのかもしれない。
![]() | ELECOM LANケーブル CAT5e 爪折れ防止 50m ブルー 【PlayStation 4 対応】 LD-CTT/BU500 |
自作用のケーブルとして使用。そんなに長さは必要なかったので、50mの通常タイプのケーブルを買って切って使うことに。コストパフォーマンス的には、100mのコネクタがない自作用ケーブルの方が良好ではあるものの、大量に余らしても使いどころがないのでこれにした。元が普通に使うためのケーブルなので、クオリティには一切の問題はなし。
LANケーブル自作のメリットは「自由自在に好きな長さのケーブル」を作れること。コストなメリットは、あまりない
話は前後するが、実際のケーブル作りは以下のページを参考にしておこなった。慣れるまで若干の時間と練習が必要になるが、コツさえつかめば特に難しいことなく、テレビを見ながらでも簡単に作れるようになった。
一通り道具を買って作業をしてみた感想としては、一番のメリットはやはり「任意の長さのケーブルを好きなだけ作れること」だと感じた。大概のLANケーブルは大概1m単位、長いものだと数m単位で販売されていて、例えば2m30cmぴったりのケーブルなんてものは売っていない。もちろん大は小を兼ねるため長いものなら代用できるが、余ったケーブルが邪魔になって、狭い場所ではケーブルでごちゃごちゃになってしまうことも珍しくない。ケーブルの自作はそれらの問題を一気に解決し、ケーブルマネージメントを改善してくれる。
また、ハブの近くにたくさん機器を置きたいときに、数十cmのケーブルを何本も作る、といったことも自由自在だ。もちろん、爪が折れたLANコネクタを簡単に付け直せるため、配線し直すことなくケーブルを修復できることも地味に嬉しい。
反面、コストパフォーマンスは決して良くない。最近はLANケーブルですら100円ショップで売られていて、1~3m程度のケーブルなら100円で購入することができる。これは1000円(+税)あれば10本のケーブルが買えるということで、短いケーブルで済む用途ならば、これを買えば十分に事足りてしまう。1000円では道具すらそろわない自作ケーブルを考えるなら、そのコストパフォーマンスは比べものにならない。そしてLANケーブル自体の価格が低下し、かつ無線LAN対応機器の普及が著しい(つまり遠くまでケーブルを延ばすぐらいなら、無線で繋いだ方が早い)昨今では、自作ケーブルの価格的なメリットはほぼない、と言ってしまってもいいのではなかろうか。
とはいえ、安定性と平均通信速度は有線接続の方がまだまだ優れているので、有線ならではの強みがあるのも事実。それらに魅力を感じ、かつ「好きな長さのケーブルをそれなりの数作りたい!」という人なら、道具を買ってみて自作LANケーブル作りを初めてみるのも悪くない……かもしれない。
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