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自炊(書籍の電子化)に一番必要なものはなにか

ScanSnap S1500

自分が「自炊」(書籍や雑誌の電子化)を初めて、1年半ほど経った。自分が主に自炊しているのは部屋を占拠していた雑誌なのだが、もちろんそれだけではなく、通常の書籍や単行本なども取り込んでいる。取り込みが完了した本の正確な数は数えていないが、1000冊には届かないものの、計算上は数百冊を電子化したのは間違いない。とはいえこれだけ取り込んでも、まだまだ大量の本が残っているので、作業が終わりそうな雰囲気はまったくない……というのがすこし悲しい。

ところで「書籍の電子化に必要なもの」と聞かれたら、普通は何を思い浮かべるだろうか? 自分の場合、最初は基本的に道具のことしか頭に浮かばなかったし、同じように考える人は多いのではないだろうか。具体的には、ドキュメントスキャナや断裁機、あるいはデータを編集・保存するためのPCなどが挙げられる。もちろんこれは自炊代行業者に任せない限り、必要なツールであることに間違いはない。

だが、実際に道具を買い込んで作業をおこなってみると、本当に必要なのはそれらではないことに気がついた。端的に、一番必要なのは作業をおこなう時間とモチベーションだ。はっきり言ってしまうと、本格的に大量の本を電子化するには、相当に時間がかかるし、データのクオリティにこだわればこだわるほど、作業にかかる時間はどんどん増えていく。

道具と完成クオリティへのこだわりで、作業時間は大きく変わる

自炊作業は、おおむね次のような工程に分けられる。

  1. 書籍の断裁
  2. 断裁した紙の読み取り
  3. 読み取った画像ファイルのチェックと整形

1.と2.の速度は、基本的に道具の性能で決まる。断裁は一気に多くの枚数を切れる断裁機の方が作業が早く終わるし、読み取りは高性能なドキュメントスキャナの方が当然速度が速い。もちろん手際や作業ミスによる速度変化はあるが、極端に変わるというほどのものではない。一言でいえば、「利用者がいくらがんばっても、(機械の性能以上の)一定の速度以上にはならない工程」という感じになるだろうか。

では、3.はどうだろうか。
恐らく、ここが一番個人差が出やすい工程だと思っている。というのも、クオリティの高いファイルを作ろうとすると、ここに必要な時間が右肩上がりになっていくからだ。

具体例を挙げよう。ドキュメントスキャナで読み取った書類には、縦方向に白や黒の線(模様)が付いていることがある。これはスキャナの読み取り面にゴミやほこりが付着し、正常に読み取れなくなった部分が、縦縞として画像に残るものだ。複数の画像の同じ場所に同様の線が現れる、かなり特徴的なノイズで、体験上発生率はそれなりに高い。

さて、ではこのノイズをファイルに残したくない場合、どのような作業が必要だろうか? 人によって違いはあると思うが、自分の場合は以下のようにしている。

  1. 読み取ったファイルを一通り目視でチェックする
  2. ノイズを発見した場合、そのファイルだけ掃除したスキャナでもう一度読み取り直す
  3. 読み取り直したファイルをもう一度目視でチェックする
  4. 再度発見したら2.を繰り返す

当たり前だが、目立ったノイズがなくても最低限1.の行程はこなさなければいけないし、場合によっては2.~3.を繰り返す必要がある。部分的なスキャンのし直しはそれ単体では大した時間はかからないが、チェック行程を含めると結構な手間がかかるし、ちりも積もれば相当な時間となってくる。無論、面倒ならやらない手もあるが、元になった断裁済みの本を捨ててしまった場合は、後からノイズに気がついてもその部分は読み取り時点で欠落してるわけだから、元の画像を取り戻すすべはない。また、仮にできあがり後のクオリティをまったく気にしない人でも、本の解体とスキャナで読み取る手間と時間はどうしてもかかってしまう。

自炊ブームが盛り上がってきたとき、一部のサイトでは「1冊数分~10分程度の簡単作業!」とうたっているところも結構あった。だが、個人的にはそれは「本当に最低限の作業だけを機械的におこない、できあがりのクオリティをほぼ気にしない場合」に限られるのではないかと思っている。市販の電子書籍レベルのクオリティを想定しているなら、恐らく期待は大きく裏切られるではないだろうか。

「読むことが目的」の人に自炊をすすめるのは難しい
「作ること自体にも大きなメリットを感じる人」向けの作業だ

最近、自炊のブームは一段落した印象がある。恐らくそれは、電子書籍の普及により最初から電子版の販売がおこなわれることが増えたこともあるのだろう。だが、個人的には「自炊という作業が一般化しにくかったから」という側面も大きかったからではないかと考えている。端的に、時間がかかるし面倒なのだ。少なくとも、「とっても簡単!誰にでもおすすめ!」と呼べる作業であるとはあまり思えない。

もちろん、自炊には自炊のメリットがある。DRMはかかっていないし、PDFにもJPEGにも自由に変換できるし、画像の解像度もスキャナが許す限り高くできる。また、電子化される確率が限りなくゼロの、古かったりマイナーだったりする本や雑誌をデジタルデータで所有したいなら、自炊しか選択肢はない(自炊代行業者を使うという手もあるが、法的な決着が未だ付いていないようなのと、クオリティと(大量に本があるから)スキャンコストが気になるため、自分は使用していない)。

ちなみに、今現在も自炊をしている自分でも、デジタルデータで欲しい本が紙とKindle版の両方で販売されていた場合は、後者を選んでいる。上記のようにDRMや解像度に不満を覚えることも多いが、それを考慮して、かつ作業に慣れた今でもなお、「手間と時間というコスト」をそれなりに大きく感じるからだ。

自炊にまだ興味があって、やってみたいと考えている人は、「そもそも自炊作業をおこなう時間があるのか」と「作業を続けるだけのメリットを感じる状態なのか(モチベーションを保てるのか)」という点も考慮した方がいいように思う。これらは道具の用意と違う「目に見えない(お金で計れない)コスト」だが、経験上一番大きく響いてくるように感じている。自分自身はもちろん後悔していないが、自炊道具一式は(特に本格的に始めようとすると)決して安いわけではないのだから。