安価なXbox 360互換ゲームパッドの実力は? ロジクール「F310r」レビュー

ロジクール F310r

先月、PCでゲームをプレイするためにビデオカードを導入したのだが、同時にゲームパッド(ゲームコントローラー)も入手していた。購入したのは、入力デバイスで有名なロジクールの「F310r」。実売価格で2000円前後と、かなり買いやすい価格帯のモデルだ。

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このF310rを使って何本かソフトをクリアし、自分中での評価も固まってきたので、実際の使い勝手をレビューしてみる。近年のPC用ゲームパッドは、バッファローが出しているような1000円を切る非常に安価なモデルから、PS3やXbox 360の純正コントローラーのような、品質は申し分ないが価格もかなり高いモデルまで様々な選択肢がある。そんな中で、入力デバイスの定番メーカーが発売している“丁度真ん中”あたりの価格帯の製品は、どのようなクオリティに仕上がっているだろうか。

「F310r」基本スペック

F310は、ロジクール(Logitec)が発売するUSB接続タイプのゲームパッドだ。Xbox 360やPS3のコントローラーと同じ、8個のボタンと2つのトリガー、2つのアナログスティック、さらに十字キー(D-Pad)を用意する、典型的な形状の製品といえるだろう。デバイスとしては、Xbox 360コントローラーと互換性を持つ「XInput」対応ゲームパッドであるため、近年の(XInput対応の)ゲームなら、差し込むだけで即座に使い始めることができる。

振動や連射機能などは特に搭載されてはいないため、全体としてはシンプルな作りだが、その代わり重量は実測で170g(ケーブル除く)とかなり軽い。長時間プレイしても重さによる疲労は感じず、手で持ったときのグリップ感もいい。作りが安っぽくないことも含めて、ゲームコントローラーとしての作りは良好な印象だ。

F310rのボタンレイアウト
F310rのボタンレイアウト。Xbox 360とPS3のコントローラーを足して2で割ったような意匠だ。

中心部のロジクールのロゴは押せるようになっており、これを含めればボタンは9個となるが、機能はXbox 360のガイドボタン(通称「しいたけボタン」)と同じで(PCゲームでは)重要度は低い。後述の「DirectInputモード」に切り替えると動作しないので、基本的にゲーム自体には使用できないと思った方がいいだろう。

中心左下(「Backボタンの下」)のボタンは「MODE」ボタンで、「左アナログスティック」と「十字キー」を入れ替える機能が割り当てられている。ロジクールは普通のモードを「フライトモード」、入れ替えたモードを「スポーツモード」と呼んでいるが、単に「緑色のLEDが点灯していたら十字キーとスティックが入れ替わっている」と覚えておけばいいだろう。使い所に関しては限られる感じがするが、説明書には「キャラ操作と視点操作を切り替えたいときに使う」と書かれている。

F310rのXInput・DirectInput切替スイッチ
F310rのXInputとDirectInput切替スイッチ。奥まったところに設置されており、かつスライドスイッチには適度な固さがあるため、間違って動いてしまうことはない。

パッドの裏には、本機の売りの1つである「XInput」と「DirectInput」の切替スイッチが用意されている。

簡単に整理すると、XInputがWindows Vista以降に普及した「新しいコントローラーの制御方法」で、DirectInputがそれ以前の「古い制御方法」となっている。近年のPCゲームは多くがXInputに対応しているので、(XInputモードで使えば)USBポートに差し込むだけで、何も設定することなくそのまま家庭用ゲーム機と同じボタンアサインでプレイできる。また、古い(あるいはXInput非対応)ゲームなら、パッドのモードをDirectInputにすれば、“(旧来の)一般的なゲームパッド”として使用できるため、使用できるシチュエーションを選ばないのが強みだ。

ただし、このDirectInputモードで使うときは、ゲームソフト側でコントーラーのアサインを手動変更しないと、操作が変になってしまうことが多い。まあこのあたりは昔のPCゲームでは珍しくない挙動なので、検索したり、ゲームのヘルプをチェックすればいいだろう。

いずれにしても、このXInputとDirectInputの切り替え機能によって、F310rは新旧様々なゲームで使用できるというわけだ。

全体的なフィーリングはXbox 360コントローラーと同じだが、十字キーの作りは非常に良好

さて、実際の使用感だが、アナログスティックのレイアウトがPSシリーズの「デュアルショックと同じ」という点を除けば、基本的にXbox 360のコントローラーと同じだ。注意して感覚を確かめると、各ボタンやスティックが若干重く(固く)、押したときの音も少し大きいが、ゲームをプレイしていて気になるほどではない。今までアナログスティック付きのコントローラーを使ったことがある人なら、何の違和感もなく使い始められるだろう。

良い意味で、Xbox 360のコントローラーと比べたときの大きな違いは、十字キーの作りの良さだ。Xbox 360コントローラーは十字キーの作りが最大の弱点で、「真横に入れたつもりが普通に斜め入力になる」「左に入れたらなぜか下に入った」など、摩訶不思議な動きをすることで(利用者の間では)有名だ。十字キーの使用頻度が低いゲームなら特に問題ないが、活用するゲームだと目も当てられない状態になることもある。

F310rのD-Pad(十字キー)
F310rのD-Pad(十字キー)部分。どこにでもありそうなデザインだが、操作性は想像以上に高い。

その点、F310rの十字キーは見た目こそ大した違いはないが、操作性は桁違いに良好だ。押したときのクリック感がしっかりとあり、上下左右と斜めが適切に入力される。正直なところ、「今からでも遅くないから、マイクロソフトは十字キーのパーツをこれと取り替えてはどうか」といいたくなってしまうレベルだ。ロジクールは、この十字キーを「独自開発のフローティングDパッド」と呼んで売りにしているのだが、その自信も納得できる作りだと素直に思う。

弱点は「L・Rトリガーの固さ」と「MODEボタンのレイアウト」か

本機を使っていて気になる点としては、他のネットのレビューなどでも良く書かれていることだが、「L・Rトリガーの固さ」だろうか。
F310rのトリガーは、トリガーと言うより「ストロークが長めのボタン」に近いのだが、そこに設置してあるバネがかなり強力なようで、一言で表すと「押し続けるのに結構力がいる」と感じる。押し込める深さが十分に用意できない中で、(軽いストロークでは一気に押し込んでしまうから)細かい調整ができるように、こんな仕様になっているのだと想像するが、使っていて長時間押し込み続けるのが結構ツライ。もちろん、使用頻度が低かったり、「武器の引き金として押す」程度なら問題ないのだが、レースゲームやGTAシリーズの「車のアクセル」として長い時間押し続けると、かなり指が疲れてしまう。

十字キーとは逆に、トリガーに限っていえば、Xbox 360のコントローラーの方がずっと軽くて押しやすい。同じように長時間ゲームをプレイしていても、Xbox 360のトリガーなら「引きすぎで指が疲れた」と感じた記憶はないので、このあたりは明確な違いがあるといえるだろう。

もう1つ気になった点として、「MODEボタンを誤爆しやすい」というのもある。前述のとおり、MODEボタンは十字キーと左スティックを入れ替えるボタンで、普通はゲーム中に多用することはない。基本的には、「ゲームによって使うか使わないか決める」という程度で、人によってはまったく使わない人もいるだろう。
だが、このMODEボタンは中央のかなり(下手をすれば「START」や「BACK」以上に)押しやすい場所に設置されていて、慣れないと誤爆してしまうことが結構ある。押したかどうかの状態はパッドのLEDを見ればわかるが、ゲーム中はそもそもコントローラーなんか見ていないから、うまく動かなくなって初めてモードが切り替わったことに気がつく、なんてこともあった。

このMODEボタンに関しては、裏のXInput切り替えスイッチと同じようにスライド式にするか、もっと押しにくい場所においた方が良かったのではないかと思う。

ゲームパッドとしては良好な出来で、コストパフォーマンスは高い
満足度は十字キーとトリガーのどちらの使用頻度が高いかによる

以上、F310rを見てきたが、簡単にまとめれば「全体的な作りは良好で、ゲームパッドとしての合格点は十分クリア。トリガーの固ささえ何とかなれば、ほぼ満点の出来」という感じだろうか。2000円前後という実売価格から考えれば、安っぽさを感じない品質で、コストパフォーマンスは十分に高い。実はロジクールではお馴染みの「3年間無償保証」もついているため、故障をあまり気にすることなく、アグレッシブに使っていくこともできるはずだ。

弱点としては「トリガーが固い」「連射や振動の機能がない」というあたりが目立つものの、代わりに「十字キーが使いやすい」「XInputとDirectInput両対応で、多くのゲームに対応できる」「軽くてシンプルな形なので疲れにくい」という強みもある。具体的にこれらがどう影響するかは、プレイするゲームによるが、個人的には買って損をしたという印象はない。ただ、アナログトリガーの使用頻度が高いゲームでは、やはりある程度の使いにくさは否めないだろう。

ゲームパッドは様々なメーカーから出ているが、クオリティはまさにピンからキリまで。そんな中で本機は、ロジクールらしいクオリティと価格のバランスが取れた、あまり人を選ばない製品に仕上がっていると感じた。これより少し下の価格帯の、かなり安っぽい作りのゲームパッドを買うつもりなら、少し予算を追加してでも、このF310rを買ってみる価値はあるのではないかと思う。