ZOTAC「ZT-70405-10P」レビュー 250ドルで買えるGTX 760は“買い”か?

ZOTAC 「ZT-70405-10P」

自作PCを「ゲーミングPC」にアップグレードするために、ビデオカードを導入した。購入したのはZOTAC製のGeforce GTX 760のカード「ZT-70405-10P」で、価格は26000円弱だった。予算との兼ね合いで最後の最後まで2万円前後のGTX 660と迷ったものの、「GTX 660はすでに旧世代品である」という点と、「3万円前後だったGTX 760も、セール品を狙えば本来の米国価格である250ドル(=25000円前後)で買える」というのが決め手となった。

ビデオカードは同じチップが搭載されていても、メーカーやモデルによってかなり価格に差がある。その中でもこの「ZT-70405-10P」は、オーバークロックモデルかつオリジナルファンを搭載しながらも、セール時期(週末など)を狙えば、GTX 760の中でもほぼ最安値に近いコストパフォーマンスの高さが目立つ“気になる商品”だった。

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しかし、ビデオカードに限らずPCパーツは、必ずしも「安ければそれで良い」というわけでもない。製品によって、性能や耐久性、あるいは静音性などに差が出ることが珍しくない。ビデオカードの場合は、同じチップなら性能に大きな差はまずないが、搭載するクーラーやファンによって冷却性能や静音性は大きく違ってくる。

そういった点から見て、この「ZT-70405-10P」は実際のところどうなのかレビューしてみる。ある意味「価格」で選ぶ商品だが、「安物買いの銭失い」にならずに済むのか、詳しくレビューしてみたい。

「ZT-70405-10P」基本スペック

「ZT-70405-10P」の基本的なスペックは以下のとおり。製品の位置づけとしては「ミドルハイ」あたりになり、現行の多くのゲームでフルHD(1920×1080)の解像度なら「最高品質」か「高品質」設定でのゲームプレイが可能になる。軽めのネットゲームなら楽勝……というか、若干オーバースペックになってしまう製品だ。

なお、オーバークロックモデル(コアクロックのみ)であるため、GTX 760のリファレンスモデルの数値も併記しておくので参考にして欲しい。

「ZT-70405-10P」スペック表
型番ZT-70405-10P
搭載チップGTX 760 (GK104)
コアクロック / ブーストクロック1059MHz / 1124MHz
(リファレンス 980MHz / 1033MHz)
ビデオメモリ / メモリクロックGDDR5 2GB / 6008MHz
メモリインターフェース/バス幅256bit / 192.26GB/s
DirectXサポート11.1
TDP/外部電源コネクタ180w / 6ピン ×2
出力端子デュアルリンクDVI ×2, HDMI ×1,DisplayPort ×1
付属品DVI → D-Sub変換ケーブル ×1, 6ピン変換電源ケーブル ×2, マニュアル, ドライバディスク
GPU-ZでGTX 760の詳細を表示させた様子
GPU-Zで「ZT-70405-10P」の詳細を表示させた様子。

見ればわかるとおり、オーバークロックモデルでコアクロックが引き上げられている点を除けば、メモリクロックもリファレンスどおりの極めて普通のGTX 760カードになる。一部のメーカーでおこなっているゲームソフトやゲームアイテムのバンドルもなく、付属品といえば変換コネクタとドライバディスクと極めてシンプルな構成だ。また、オリジナルクーラーを搭載しているが、これも珍しくなく取り立てて目立つ点ではない。

ただし、クーラーの出来はそのまま冷却性能と静音性に直結するため、かなり重要なポイントではある。このあたりはしっかりチェックしていきたい。

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「ZT-70405-10P」のオリジナルクーラー。ショートタイプで75mmの可変ファンが2機搭載されているが、重さやヒートパイプ数もそこそこで、全体的にシンプルな作りだ。

スペックだけざっくりチェックすれば、「なるべく安いGTX 760が欲しいが、素のリファレンスモデルは嫌だ」という人が選ぶべき製品と考えられるだろう。無駄なものはなるべくなくし、製品だけの魅力と価格で勝負するタイプだ。ソフトやクーポンに関してはいらない人も多いだろうから、これはこれで魅力的な商品といえるのではないか。

とても「静か」なクーラーなのだが……

それでは早速一番重要な「性能」を把握するベンチマーク結果に入りたいところだが、その前に付属のクーラーのレビューに入りたい。もちろん理由があってのことで、詳しくは後述する。

まず、負荷がない状態では1350rpm前後でファンは回転し、室温30強で温度は38度前後。この状態ではファン自体の音はほとんど聞こえない。ケースファンがついていれば、大概はその音にかき消されて、ファンの回転音は聞こえないのではないか。

次に負荷状態だが、75度を超えたあたりから急激にファンの速度が上がり始め、2100rpm前後で安定する。負荷状態が続いてもこれ以上は上がらないため、どうやらデフォルト状態では上限がこのあたりに設定されてるようだ。調べたところこの2100rpm時点でのファンスピードは57%であるため、負荷状態でもファンの最大回転数から相当絞られた速度になっていることがわかる。

ではその最大回転速度である2100rpm前後でのファンの騒音だが、これも静かであるといえる。耳を澄ませばケースファンの音に混じってビデオカードのファンの音が聞こえるが、本当に「周りが静かな状態で聞き耳を立てれば」というレベルだ。ゲームプレイ中でBGMや効果音が鳴っているなら、はっきり言って聞こえるとはとても思えない。実際、自分がゲームをプレイしていても、ビデオカードの騒音はまったく気にならないといってもいい。上で書いたように「負荷状態でも回転速度を絞った」効果がかなり出ているようだ。

ちなみにファンの動作をユーティリティで無理矢理100%のフル回転に固定すると、回転速度は3800rpm前後にまで上がる。この状態での風切り音は相当に大きく、ファンの騒音がかなり耳につく。正直かなりうるさいので、実用に耐えるかはかなり怪しいところだ。「ゲームをするときはいつも大音量で密閉型ヘッドフォンを使う」という人でもない限り、ファンを最大速度で使うのはちょっとおすすめできない。

結論としては、もちろん主観ではあるが、デフォルト設定で使う限りはこのZT-70405-10Pに搭載されているクーラーは十分静かな部類に入る。これはオンボードビデオから乗り換えで、元々ビデオカードのファンがなかった状態から比べての感想になる。恐らく十分に「静音」という区分に入るのではないか。

「静か」はパフォーマンスを犠牲にした結果か?

以上の検証によって、このZT-70405-10Pは「搭載しているファンの回転速度をデフォルト状態でかなり落とし、それによって静音化を図っている」ことがわかった。しかし、そこで気になるのは「冷却性能の方は問題ないのか?」ということだろう。ファンの回転速度を低下させれば当然冷却性能が落ちるため、オーバーヒートや安全のための自動クロック低下が懸念される。まあ昨今は仕様上オーバーヒートはないにしても、クロックの低下は気になるところだ。

調べた結果、結論としてはブーストクロックの上限を常時維持できてはいない。このカードは安全のため最大温度を80度に設定しているようなのだが、負荷が長時間かかると温度が80度に張り付き、最悪でベースクロック(1059MHz)あたりまで落ちてしまう。どうやらデフォルト設定ではファンの速度が足りていないようだ。

ベンチマーク中のZT-70405-10Pの動作
ベンチマーク中のZT-70405-10Pの挙動をGPU-Zで監視した様子。GPU Boostでの最大値より、クロックが落ちている。

当たり前だが、この状態では(ブーストクロックを維持できる状態に比べ)若干だがベンチマークスコアは落ちる。ブーストクロックを限界状態に常時保ちたいときは、付属のユーティリティソフト「ZOTAC FireStorm」でファンの回転数を上げる必要がある。

ZOTAC FireStorm
付属のユーティリティ「ZOTAC FireStorm」のファン設定変更画面。ファン速度以外にもオーバークロックの設定などが可能だ。

自分の環境で試した結果、もしファン速度を変更する場合は、静音性重視なら最大回転速度を70%、冷却性能重視なら80%ぐらいが許容範囲という印象だ。100%はかなりうるさいため、ゲームへの没入感を低下させる可能性がある。たまにベンチマークを回すだけというような使い方なら別だが、ゲームに使うたびに小さくない風切り音を聞くのは、ちょっと避けたい。

前述のようにZT-70405-10Pは静音性が比較的高いが、それはクーラー付属のファンの回転速度を意図的に絞った設定にしているからだ。これを「まだマージンがある」と見るか「性能に足かせがある」と見るかは人によるだろうが、いずれにせよ簡単にファン速度は変更できるので、好みで任意の設定に調節すればいい。個人的にはピーク性能より静音性の方が重要なので、デフォルト状態の「静音設定」で使っている。

各種ベンチマーク結果

前置きが長くなったが、一番重要な性能の評価に入りたい。動作の検証に使ったPCのスペックは以下のとおり。

ベンチマークをおこなったPCのスペック
CPUIntel Core i7 4770 (4コア8スレッド 3.4GHz)
ビデオカードZT-70405-10P (Geforce GTX 760)
マザーボードASROCK Z87M Extreme4 (Intel Z87)
メモリDDR3 1600 8GB×4 32GB
HDDTOSHIBA DT01ACA300
OSWindows 7 Professional SP1 64bit版

追加情報として、スペック表ではZT-70405-10Pのコアクロックを「1059MHz / 1124MHz」と書いたが、GTX 760はNVIDIAの自動オーバークロック技術「GPU Boost 2.0」が採用されているため、温度に余裕がある場合にさらにクロックが上がる。ベンチマーク中にチェックした結果、最大「1136MHz」までコアクロックが上昇した。ほんのわずかだが動作クロックにマージンがあるようだ。

ベンチマーク設定と各種注意点

グラフィックドライバとベンチマークソフトの設定は以下のとおり。

  • グラフィックドライバはNVIDAコントロールパネルから、「垂直同期」を「オフ」に、「マルチディスプレイ/ミックス GPU アクセラレーション」を「シングル ディスプレイ パフォーマンス モード」に変更し、それ以外は初期設定のままとする。
  • 基本的にすべてのベンチマークソフトは、解像度をフルHD(1920×1080)のフルスクリーンモード、画質は「最高」(もしくはそれに準ずる)設定にする。
  • 3DMARK(2013)のみ無料バージョンでは設定の変更ができないため、そのままでテストを行う。

なお、冷却性能によるスコア変動を考慮し、それぞれ「デフォルト状態」と「冷却ファンの速度を100%に固定した状態」の両方でテストを行った。前述したように、ファンの回転数の関係から高負荷状態が続くとクロックが上下するので、それがスコアにどう影響を与えるのか確認できるはずだ。(先に冷却性能の話をしたのは、これが理由。)ファンの回転数を上げて運用することに抵抗がないなら、後者のスコアの方がより参考になるだろう。

3DMark (2013)

デフォルト
3DMark (2013)のベンチマーク結果
ICE STORM146054
CLOUD GATE20921
FIRE STRIKE5447
冷却ファン100%固定
3DMark (2013)のベンチマーク結果(ファン速度調節)
ICE STORM146516
CLOUD GATE20979
FIRE STRIKE5517

FF14 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編

デフォルト
新生FF14のベンチマーク結果
SCORE8812
評価非常に快適
冷却ファン100%固定
新生FF14のベンチマーク結果(ファン速度調節)
SCORE8952
評価非常に快適

ドラゴンクエスト10 ベンチマーク Ver.1.10

デフォルト
ドラクエ10のベンチマーク結果
スコア17585
評価すごく快適
冷却ファン100%固定
ドラクエ10のベンチマーク結果(ファン速度調節)
スコア18127
評価すごく快適

バイオハザード6 ベンチマーク

デフォルト
バイオハザード6のベンチマーク結果
SCORE9317
RANKS
評価とても快適な動作が見込めます
冷却ファン100%固定
バイオハザード6のベンチマーク結果(ファン速度調節)
SCORE9551
RANKS
評価とても快適な動作が見込めます

寸評

まず最初に断っておくと、今回用意できたベンチマークソフトでは、3DMark(2013)以外は最先端のグラフィック技術(DirectX 11など)を使用したものではない。自分でも少々残念なのだが、中々いいソフトが見あたらなかったので勘弁していただきたい。

さて、3DMarkのFIRE STRIKEを除き、今回テストしたゲームのすべてで、フルHDの最高設定で快適にプレイできることがわかる。特に元々Wii用ソフトで始まったDQ10には完全にオーバースペックという感じで、裏でもう1本別のゲームが動かせそうなぐらいだ。今年から来年にかけたPCゲームをフルHDの高品質設定で快適にプレイしたいなら、GTX 760は選んで損はない選択肢といえるだろう。

気になる「ファンの回転数によるスコアの変動」だが、個人的には「思ったより(スコアの差が)小さい」という印象だ。見ているとクロックは小刻みに動いているので、そこまで大きな影響がないのかも知れない。少なくとも「劇的にスコアが変化する」というレベルではないため、ファンの回転数を調節するかどうかは好みの問題になりそうだ。

「満点」とは言い難いが「コストパフォーマンス」は高い
最安クラスのGTX 760ビデオカードとしてはお買い得感は十分

以上、ZT-70405-10Pをレビューしてみたが、特に大きな不満点はなく全体的な満足度は高い製品だった。付属品は最低限、搭載されているクーラーもそこまで豪華なものではないが、「そこそこの価格で、ミドルレンジ以上のビデオカードが欲しい」という目的を過不足なく満たすことができている。

静音性とのトレードオフになった冷却性能は気になる点ではあるが、付属のユーティリティを使えばどちらを優先するかをユーザが選べるので、そこまで大きな問題には見えない。また、デフォルトが静音設定に振ってあるのも、個人的にはポイントが高いと感じた。(玄人は自己責任で設定をチューンして使えばいいし、逆に素人は静かな方が多少スコアが落ちてもメリットが大きいと考えられる。)

反面、クーラーがさらに大きなタイプでファンも大型だったらユーザーが設定をいじる必要はなかっただろうし、そもそももっと動作クロックを高くできただろうとも思う。実際、コアクロックがさらに高く設定されていて、メモリもオーバークロックしてさらにパフォーマンスを高めたモデルも普通に販売されている。こうしたモデルなら、さらに性能の上積みがあるだろう。

しかし、当然そんなモデルは割高なので、タイトルにも入っている「250ドル」では全然収まらない価格がついている。そもそもGTX 760を購入するメリットは、「GTX 670 LE的な仕様で性能はそこそこ高いのに、価格は(米国では)660 Tiより安い」という戦略的な価格付けによる、コストパフォーマンスの高さにある。それにもっと予算に余裕があるならば、さらに上位のビデオカードを“狙う”ことができる。当たり前だが、そちらの方が性能がいいに決まっている。

結論としては、日本でもやっと250ドル(25000円)まで価格が落ち着いてきたものもあるGTX 760は十分に“買い”と言っても良く、当然その中に今回の「ZT-70405-10P」も含まれる。前述ようにいくらかの弱点はあるが、致命的なものではないと感じている。絶対的な性能ではなくコストパフォーマンスを重視する人なら、このビデオカードは文句なくすすめられるモデルのひとつになるのではないか。