静音性抜群の80PLUS GOLD プラグイン電源 Seasonic「SS-650KM3」レビュー

Seasonic SS-650KM3

少し前に自作PCのケースを交換したのだけれど、中身を全部移動して起動し終わったあと、ケース内から異音が発生していることに気がついた。調べたところ電源ファンからかなり大きな軸ぶれ音が発生しているので、どうやら電源が寿命を迎えてしまったらしい。この異音自体はケースを変える前から発生していたはずなのだが、他のケースファンなどの音がうるさすぎて気がつかなかったようだ。

せっかくPCケースを変えて静音環境に近づいたのにこれでは台無しだし、そもそも電源の冷却にも不安があるということで、PC電源を買い替えることにした。今年中にHaswellで組み直すことを決めていて、かつ「最新ゲームもできるオールマイティな構成」にする予定でいたので、ある程度奮発してでも高出力・高品質・静音性というすべての条件を満たすものを買うことに。かなり色々悩んで検討した結果、次の電源を選択することにした。

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今回電源を選ぶにあたり、自分には以下のようなニーズがあった。これらを確実に満たし、かつ電源自体のクオリティが高いものを探していたら、Seasonicの「X-Series」であるこの「SS-650KM3」にたどり着いた……というわけだ。

  • プラグイン電源であること
  • 静音性が高いこと
  • 電源効率は「80 PLUS」のシルバー以上
  • 取り回しがいいようにケーブルが固くないこと
  • SATA電源コネクタが多い
  • 保証は長いに越したことはない
  • ALL日本コンデンサならなお良い

もちろん、これらを満たす電源が他にないわけではない。今やプラグイン電源なんて珍しくないし、そもそも普通に売っている電源のほとんどが静音性をうたっている。だがスペックや評判、レビューをしっかり調べると、多くの製品は「音は静かだがケーブルが固い」「ケーブルは柔らかいがコネクタ数が物足りない」「静音ファンを搭載しているが重要な寿命(MTBF)が短い」など、何かしら引っかかる点があった。正直なところ、「理想の電源」となると中々見つからない。

その中でこの「SS-650KM3」は、スペックも評判も数少ない“欠点が見あたらない”電源だった。あまり売れ筋の商品でないからか日本でのレビューはほぼないのだが、海外のレビューでは価格面を除き評判はすこぶるよい。今回は実際にそれを使ってみてどうだったのかをレビューしてみたい。

なお、先に注意点をひとつ。今回の記事は電源のレビューではあるものの、ワットモニターを持っていないし、ソフトでの電圧モニターは誤差が大きすぎるので、電圧や消費電力には直接触れずに実際の使い勝手を中心に語っている。電圧変化などをしっかりチェックしたい人は、以下のページが参考になると思うので、海外のレビューではあるがそちらを読んでいただきたい。

「SS-650KM3」基本スペック

今回の電源の基本的なスペックは以下のとおり。

型番SS-650KM3
定格出力650W
80PLUS規格GOLD
対応規格ATX 12V Ver.2.3 / EPS 12V Ver.2.92
サイズ(W)150mm×(D)160mm×(H)86mm
搭載ファン山洋電気製 12cm 2ボールベアリングファン×1個
ケーブルATX 24 / 20ピンケーブル×1
EPS 8ピンケーブル×1
ATX 4+4ピンケーブル×1
PCI-E 8(6+2)ピンケーブル×2(合計コネクタ数4)
SATAケーブル×3(合計コネクタ数10)
ペリフェラル(HDD)4ピンケーブル×2(合計コネクタ数5)
FDDケーブル×1(合計コネクタ数1)
※すべてプラグインタイプ
保護回路短絡保護回路
過電圧保護回路
過負荷保護回路
過熱保護回路
過電流保護回路
電源入力AC 100-240V (自動切替) 50-60Hz
コンデンサオール日本メーカー製105℃コンデンサ
MTBF100,000時間
保証期間5年間交換保証

「SS-650KM3」定格出力表
「SS-650KM3」の定格出力表。(公式サイトより)

「SS-650KM3」は代理店のオウルテックが販売するSeasonic製の650WのPC電源。Seasonicではハイエンドモデルになる「X-Series」に入り、電源変換効率の基準である「80PLUS」で高効率のGOLD認証(負荷50%で90%以上)されているだけでなく、寿命に大きく影響するコンデンサにはオール日本メーカー製105℃タイプを採用している。さらに豊富な保護機能を搭載し、冷却ファンも信頼性の高い山洋電気製の静音長寿命ボールベアリングタイプを採用と、高級モデルらしい作りになっている。また、ケーブルは近年では珍しくないプラグインタイプだが、(意味があるかは別として)多くの電源では直結になっているATX 24ピンなども外せる「フルプラグイン」というちょっと珍しいものを採用しているのも特徴だ。

静音性についても妥協は見られず、前述のとおり12cmの静音ファンを採用しているだけではなく、「ハイブリッド・サイレントファンコントール」というシステムを搭載している。これは低温・低負荷状態ではファンが完全に止まり、ファンレス電源としても機能する、というもの。使うかどうかもユーザーが任意で決められ、スイッチを切り替えれば簡単に「常時回転モード」に変えることできる。静音性と冷却性能のどちらを優先したい人にも優しい、嬉しいギミックといえるだろう。

出力はメインとなる+12Vがシングルレーンの54A(648W)と、近年の大容量キロワットクラス電源に比べればもちろん少ないが、一般的なCPU1個とビデオカード(GPU)1個という環境では十二分なパワーを持っている。むしろ、デュアルGPUカードやSLI/CrossFireを使わなければ、若干持てあますぐらいと言ってもいいだろう。個人的にはもう少し容量が小さいぐらいでも良かったと思っていたものの、これより下のモデルは存在しない(完全ファンレスタイプになってしまう)のでこれを選択することにした。

「静音」の看板に偽りなし。文句のつけようがない静かさ

まず最初に断言してしまうと、この電源は極めて静かだ。前述のようにこの「SS-650KM3」は低負荷時にセミファンレスとして機能する「ハイブリッドモード」を搭載し、常時ファンが回転する「ノーマルモード」と任意で切り替えることができる。

まずテストとして「ノーマルモード」で使ってみたが、アイドル時のみならず動画エンコード中の高負荷状態でも、ファンの速度には大きな変化が見られず低回転を維持していた。実験のため電源のギリギリまで耳を近づけてみたが、その音はCPUファンなりケースファンなりにかき消されて、まったく聞くことはできない。確かにファンは回ってはいるのだが、実質的にほぼ無音と表現してしまってもいいかもしれない。回転数自体はわからないのだが、搭載されているのが「静音ファン」であるのは間違いないようだ。

次にウリの「ハイブリッドモード」にしてみたところ、起動時にほんの一瞬だけファンが動くが、その後OSが起動するまでファンは一切動かない状態が確認できた。さらにOSが起動したあともアイドル状態、Webブラウジング、動画エンコードなど様々な負荷状態でテストしてみたのだが、ファンが動く様子はない。動画のエンコードに利用したCPUは、TDP95WのCore 2 QuadでCPU使用率はほぼ100%だったのだが、この程度では650W電源には負荷が低すぎるのかもしれない。結果として今のPCで「ハイブリッドモード」を使用する場合、基本的にファンレス電源を使っているのと変わらない状態だ。もちろん、このとき電源は完全に無音になっている。

次にCPUだけでなくPC全体を高負荷状態にして、ノーマルモードでの電源ファンの回転速度とノイズの変化をチェックしてみた。しかし、結果は負荷が上がると自動的にCPUとビデオカード側のファン回転速度が上昇するため、そちらのノイズにファンの音はかき消されて電源の音は(アイドル時と同じように)認識できなかった。電源ファンの回転数自体は上昇している可能性があるが、それを体感するには“それ以外の場所”を相当静かなパーツで固めないと無理だと感じた。少なくとも、PCに相当な負荷をかけても電源が静かなのは確かだ。

結論としては、自分のPC環境で使う場合の電源の静音性は以下のようになった。

  • 「ハイブリッドモード」で使う=そもそもファンが回らないので電源は無音(断続的に回っているのかもしれないが、それも聞き取れない)
  • 「ノーマルモード」で使う=ファンは回っているが電源の音はまったく聞き取れない

最初に「極めて静か」と断言できた理由が、わかっていただけたのではないだろうか。

もちろん、これはPCの構成に左右されるため、SLIやCrossFireを利用しているようなハイエンド環境では状況が変わってくる可能性はある。とはいえ、今のPCはアイドル状態では電力消費量が少ないため、(3Dの)ゲームなどでCPUとGPUの両方をフルロードしているタイミングでもなければ、多くの環境で電源ファンが低回転状態を保てる可能性は高いはずだ。

扱いやすい「フルプラグイン」で柔軟性が高いケーブルは非常に好印象。長さはもうちょっとあってもよかったかも

この電源はプラグインタイプであるため、当たり前だが不要なケーブルはすべて外し、必要なものだけ繋いで使用できる。「使っていないケーブル」が存在しなくなるため、Micro-ATXのような内容量が小さめのケースでは特にありがたい。スペック欄で書いたとおりに直結ケーブルがまったくない「フルモジュール」タイプのため、その気になればATX 24ピンケーブルやCPU用の8(4+4)ピンケーブルも取り外すことができる。もちろん、そんなことをしても普通は起動しなくなるだけなので意味はないが、「不要なのにPCI-E 8ピンケーブルが1本だけ直結されている」みたいなことがないのはいいかもしれない。

付属のケーブルはフラットタイプで柔らかく、非常に扱いやすい。PC電源ではたまに冗談のようにケーブルが固いものが存在して、場合によってはHDDの電源コネクタ部分が壊れてしまうようなこともあるが、このケーブルならそんな心配はする必要がないはずだ。唯一ATX 24ピンケーブルだけはフラットでない普通のタイプだが、これを平たくまとめると横幅が広すぎて使い勝手が逆に悪くなる可能性があるので、妥当な選択ではないだろうか。

なお、勘違いしている人がたまにいるが、フラット(平形)のケーブルは万能ではない。狭い場所に通しやすい代わりに、「(ケーブルが横方向に並んでいるから)横方向に曲げづらい」という弱点がある。この電源のケーブル自体は柔らかいが、形状として横に自由に曲げるのは難しいことは覚えておいた方がいいかもしれない。

ケーブルの長さは普通に使う限り長くもなく短くもない丁度よい長さだが、逆に裏配線をおこなうと若干短いと感じるものもある。具体的にはSATA用のケーブルで、裏配線をするとコネクタを全部使うのがちょっと難しい。(端の方なら問題なく使える。)

とはいえ、裏配線を基準にするとケーブルが長くなりすぎてケース内で邪魔になる可能性もある。裏配線で長さが足りなければ安価な延長ケーブルを使えばいいだけなので、そんなに大きな問題ではないだろう。

ATX 24ピンケーブルについて補足

この電源に付いているATX 24ピンケーブルを見ると、ちょっと変わったものが付いている。普通は見かけない5ピンのケーブル&コネクタだ。どうもこれ、オウルテックから出ているベイオプションに使うものらしい。

逆に言うとこのコネクタ自体には汎用性がなく、残念ながら他の用途には使えない様子。上のアクセサリを持っているか、欲しい人でない限り使い所はないので、気にしなくていいだろう。

安定性もまったく問題なし。電源が原因のトラブルは皆無

壊れた電源から換装して1カ月ほど経つが、これまでに電源を起因としたトラブルにはまったく遭ってない。購入前は「24ピンまでプラグインで大丈夫か?」と思ったこともあったのだが、何の問題もなかったようだ。コイル鳴きなども発生することなく、ほぼファンレスの環境で安定した電力をPCに供給し続けてくれている。まさに「縁の下の力持ち」と言ったところだろうか。

ちなみに、例え故障したとしても「5年間の新品交換保証」が付いているため、壊れた時点で新品が手に入るということになる。5年後の自作PC界隈がどうなっているかはわからないが、長く安心して使えるのはやはり嬉しいところだ。

Haswellへの対応も万全で、さらなる省電力性が見込めるか

自分と同じように「Intelの次のプラットフォーム」での自作を計画している人は多いと思うのだが、その次世代CPU「Haswell」では電源の仕様要求が変わるとされている。一部のメーカーではすでに自社の電源の対応状態が発表されてきており、Seasonicでも先日公表された。

この「SS-650KM3」もHaswellへの対応は問題ないようで、上記リンク先の対応製品の中に入っていた。それを受けてかオウルテックの商品情報ページでも「Haswell READY」のロゴが早速掲載されている。Haswellの登場は間近に迫っていると言われているが、これなら安心して購入&利用することができるだろう。

「Haswell READY」ロゴ
「Intel Haswell Processor READY」のロゴ。(公式商品情報ページより)

ただし、実際のところは「具体的に非対応ならどうなるのか」は未だはっきりと公表されていない。しょうがないので調べてみたところ、どうも「Haswellで改良されたC6 / C7ステートの省電力技術が使えず、BIOSで(C6 / C7ステートを)OFFにせざるを得ない」という話のようだ。(正確にはトラブルを防ぐためにデフォルトでOFFになっているはずなので、ONにできない。)

Core i7/i5では、アイドル時の消費電力を低減する省電力機能「Cステート」が改良され、C6まで用意されている。

(中略)実際に同マザーボードを用い、Cステートを有効/無効にした場合の、アイドル時におけるシステム全体の消費電力を比較してみた。すると、下のグラフのとおり、C6ステートを有効にするだけで10W以上も消費電力が下がっている。

LGA1156版Core i7/i5を使いこなすBIOS設定法 | Core i7/i5全貌解明 | DOS/V POWER REPORT

Haswellでは省電力技術が強化されていますが,ほとんどの電源でHaswellのC6/C7ステートがサポートできないとのこと
というのもIvyBridgeまではC6/C7ステートで12Vライン出力が最小0.5Aでしたが,Haswellでは0.05Aまで下げられ,そこまで低い出力が出せないためとのこと
もし電源の低電圧あるいは過電圧により保護回路が働くとPCがシャットダウンしてしまうとのこと

サポートできない電源が非常に多いとみられるため,BIOSでC6/C7ステートが無効化されることで対策されるとみられます

The AMD's Cafe:HaswellのC6/C7ステートはほとんどの電源でサポートできない? - livedoor Blog(ブログ)

簡単にまとめてしまえば「電源はHaswellに非対応でも普通に使うことはできるが、省電力技術を最大限に使えない(のでアイドル時の消費電力が若干上がる)」ということなのだろう。まあ恐らく現実的には(BIOSの設定で済むので)大した問題にはならないだろうが、対応しているに越したことはないとはいえそうだ。

「妥協したくない人」が買うべきハイエンド電源。価格面の弱点はあるが、それに見合う価値はある

最初に書いたように、「プラグインケーブルで650W、静音をうたっていて80PLUS GOLD認証」というスペックの電源なんて大して珍しくはない。条件的には売れ筋に近く、選択肢はよりどりみどりと言ってもいいだろう。値段的にも1万円も出せばそこそこのものが手に入るはずで、運悪く初期不良品でも引かない限りは問題なく使えるはずだ。

その点、今回の「SS-650KM3」の2013年5月現在の価格は大体1万円台中盤から後半と、電源容量から考えれば決して安くはない。正直なところ、コストパフォーマンスが良いとはあまり言えないだろう。

それでもこの電源を選んだのは、「買った後に後悔したくなかったから」という理由からだ。うるさかったり寿命が短いファンを搭載してる電源は嫌だったし、ケーブルが固くて取り回しが悪いのも、SATAコネクタが少ないのも、安くて怪しいコンデンサが使われてるのも嫌だった。条件を妥協すればより安い選択肢はいくらでもあったが、妥協しなかったからハイエンドモデルになってしまった……という感じだろうか。とはいえ結果として、後悔することのないすべて満足できる欠点の見あたらない電源が入手できたと思う。

端的に「SS-650KM3」を買って損をしない人は、「1.5~2万円程度の予算が確保でき、飛び抜けて消費電力が大きいパーツ構成ではなく、かつクオリティに妥協しない電源が欲しい人」だ。はっきり言ってそんな人がそう多いとも思えないので、この電源が売れ筋人気商品なるとはちょっと考えづらい。ほとんどの人は、「安くてそこそこ使える電源」で十分だろう。

それでももし、自分(著者)と同じようなニーズを持っているなら、十分に検討に値する製品だと思う。この商品は決して「安い」とはいえないが、ある程度まで奮発できるなら、少なくとも電源には不満のない自作PC生活を送れるはずだ。