ホームシアター・AVアンプを使ってPCゲームを5.1chで楽しむための知識と方法

Yamaha NS-P285

 PS4やXbox Oneのような家庭用据え置きゲーム機では、ゲームの音声をマルチチャンネルサラウンド(5.1ch)で楽しむのに難しいことはあまりない。基本的に必要なのはホームシアターシステム、つまりマルチチャンネル対応AVアンプとチャンネル数のスピーカーを用意すれば、あとはHDMIなりS/PDIFなりで繋いで本体の設定を変えるだけでいい。薄型PS4やNintendo SwitchではS/PDIFがないのでHDMI接続に限られるが、機器の設置や設定方法自体には大差はない。
 もちろんDVDなどを再生するときもこの構成がそのまま流用できる。

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ホームシアターシステムの一例 ソニー 「BDV-N1WL」

 では同じようにゲームができるPCはどうなのかと言えば、残念ながら事情は大きく異なってくる。ゲーム機と同じ感覚なら「マザーボードやサウンドカードのS/PDIF出力を単にAVアンプに繋ぐだけでいいのでは?」と考えるのが自然な流れだが、後述する様々な理由があって、このままでは多くの場合にサラウンド環境にはならない。これはすでに「DVDの音声はS/PDIF経由でAVアンプにパススルーされていて、動画は5.1chで楽しんでいる」という場合でも同じで、PCゲームにはPCゲーム用の対応が必要になってしまうのだ

 このあたりの話はどうも需要がないせいかまとまった情報がかなり探しにくかったので、接続インターフェースごとに自分の勉強もかねてまとめてみた。

アナログ出力でマルチチャンネルサラウンド

M/Bのアナログ音声出力
マザーボードのアナログ音声出力端子

 自分が知っている限り、相当昔からある方法。サウンドチップ(デバイス)がマルチチャンネルをサポートしている場合、多くはオンボードサウンドですら複数のアナログ出力を用意して「○○ch対応!」とうたっていた。マルチチャンネルの実現方法としては非常にシンプルで、各アナログ出力をアンプ(かアンプ内蔵PC用スピーカ)に繋げばいいだけ。あとはWindowsの音声出力設定を目的のチャンネル数に変えればいい。

 とはいえ、この方法は今回のテーマからはちょっと離れてしまう。というのも現行の日本のホームシアターセット(AVサラウンドシステム)には、3ch以上のアナログ入力が付いている機種が極めて少ないからだ。普通のAVアンプはS/PDIFやHDMIでDolby DigitalやDTSなどのエンコード済みビットストリームを受け付ける(デコードする)することを前提としていて、そもそも2chを超えるアナログマルチチャンネル音声を入力するための端子が用意されていることがほとんどない。

 したがってアナログ出力でマルチチャンネル環境を整えたいなら、4chなら2chステレオスピーカ2台、6chなら同様に3台と、アンプ内蔵スピーカをチャンネル分だけ用意するか、ほぼPCゲーム専用のアナログ接続専用5.1chサウンドシステムを用意するしかない。
 具体的には以下のようなものだ。

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 そういったわけで、アナログ接続はチャンネル台数分のゲーム専用スピーカを用意できるならそれなりに簡単なのだが、今回は「PC + ホームシアター」という環境を前提に話を進めたいので、これ以上は触れない。気になる人は上記の「Inspire T6300」などで検索すれば体験記事などが出てくるので、そちらを参考にしていただきたい。

光デジタル出力(S/PDIF)で5.1chサラウンド

S/PDIF端子
S/PDIF入力端子(Toslink)

 多くのサウンドカードやオンボードサウンドで対応しているS/PDIF(光デジタル端子)を使う方法。PCとそのゲームで5.1chサラウンドを楽しみたい場合は、この端子か後述するHDMIの二者択一になる可能性が高い。ただ前提として安価なマザーボードや古いサウンドカード、一部のノートPCなどではS/PDIF端子自体を備えていないので、この方法を使うことはできない。

 テレビやゲーム機、DVDプレイヤーなどもこのS/PDIFかHDMIを使ってアンプに接続し、マルチチャンネルサラウンドの音声を再生する。当然PCでもこの端子を使えば普通に5.1chのゲーム音声を再生できるように見えるが、前述のようにそう単純な話で終われば苦労しない。原因は大きく分けて2つほどある。

1. S/PDIFの帯域幅が足りない

 S/PDIFはデジタル音声を転送する規格として策定されたが、一度に転送できる音声データは、圧縮されていないリニアPCMでは2chまでが限界。今回テーマにしている5.1chの音声をそのまま流すには、そもそも最初から帯域幅が全然足らないのだ。

 ではなぜDVDやデジタル放送で使われている5.1chの音声は転送できるかと言えば、それぞれDolby Digital / DTS / AACなどの音声圧縮技術(コーデック)によって容量が小さくされているからだ。AVアンプはそれらの圧縮済みデータを元に戻し(デコードし)、5.1ch音声として各スピーカに出力する。つまり逆の言い方をするなら、S/PDIFで2chを超えるチャンネル数の音声を流したかったら、何らかの方法で圧縮して帯域を節約するしかないということになる。

2. DVDビデオ、デジタル放送などと違ってPCゲームの音声は“あらかじめ圧縮”されていない

 DVDビデオやデジタル放送の場合は、パッケージングや放送された時点で音声はすでにDolby DigitalやAACといったコーデックで圧縮(エンコード)されている。一度作られた動画は何回プレイヤーで再生されようと中身は変わらないので、最初に「あらかじめ圧縮」しておけばそれでいい。そしてDVDプレイヤーやテレビは(パススルー設定なら)音声をそのままS/PDIFに流せばいいので、特に難しい処理などをする必要はない。

 だが、ゲームはそうはいかない。プレイするたびに内容が変わるので、音声はその都度新しくゲームプログラムとサウンドデバイス(サウンドカード)で作られる。DVDビデオのように「あらかじめ決められたものをエンコードしておけばいいや」というわけにはいかないわけだ。

 つまり「PCゲームの音声は(生成時点では)圧縮されてない」というソフトウェア上の問題と、「S/PDIFは圧縮されてない音声の場合、2chまでしか伝送できない」という物理的な制限によって、「PCゲームの音声はS/PDIFを使うと5.1chのままアンプに送れない」という現象が発生してしまう。

 ちなみに「音声がゲーム内でリアルタイムの生成される」というのは家庭用ゲーム機でも同じなのだが、PS4やXbox Oneなどでは設定によりゲーム機側で音声が自動的にDolby Digitalなどでエンコードされるようになっている。これによりそのまま5.1chサラウンド環境を利用できるわけだ。

リアルタイムで生成されたマルチチャンネル音声をS/PDIFでも利用できる技術「Dolby Digital Live」と「DTS CONNECT」

 それでは「S/PDIFでPCゲームの5.1ch音声を出力するのは無理なのか」といえば、そういうわけでもない。PCで生成されるサウンドをリアルタイムでDolby Digital / DTSに圧縮・変換してくれる「Dolby Digital Live」(以下、DD Live)や「DTS CONNECT」という仕組みが存在する。一見してすぐわかると思うが、前者がDloby Digitalに後者がDTSに音声を変換する規格だ。

 これを利用して変換されたDolby DigitalやDTSの音声は、AVアンプからはDVDビデオと同じようなストリームデータとして認識されるため、アンプ側さえ対応していれば5.1ch環境でゲームを楽しめる。前出の家庭用ゲーム機と同じ環境にできるわけだ。

Dolby Digital Live / DTS CONNECTを利用するには

 端的には「Dolby Digital LiveやDTS CONNECTに最初から対応したマザーボードやサウンドカード」を用意すればいい。対応製品なら製品スペックのところにきちんと明記されているはずなので、これから環境を整えたり、今後買い替える予定の人は、規格の対応状況を製品の公式サイトのスペックページでチェックすればいいだろう。
 ではハードを買い替える予定がない人はといえば、これがちょっと面倒なことになる。

「今使っている」オンボードサウンドでもDolby Digital Liveは使えるか?

 例えば、記事執筆時点でIntelの現行チップセットであるZ77のM/Bに搭載されているオンボードサウンドの場合は、かなりの確率でDD LiveやDTS Cにハードウェア的には対応している可能性が高い。軽く調べただけでも、以下のサウンドチップは対応されていることが公式サイトやデータシートなどで明記されていた。

  • Realtek
    ALC892・ALC898・ALC887
  • VIA
    VT2021

 では「やった!ハードが対応してるから使えるんだ!」となるかと言えばそうではなくて、実際に使えるかどうかはマザーボードベンダーの都合というかマザーボード自体の仕様による。DD Liveなどへの対応はあくまで「オプション」扱いであって、使用できるか否かはオーディオドライバにその機能が付与されているかで決定されるため、簡単に言えばいくらハードが対応していても、対応ドライバが付属してなきゃ使えないのだ。

 例として以下のブログでは最初は使えなかったが、メーカーの最新オーディオドライバを入れたらDD Liveが使えるようになったという体験談が書かれていた。具体的な変更手順も書かれているので、時間があれば記事自体もチェックしておくことをおすすめしたい。

で、問題となってくるのは、ウチのZ68X-UD3H-B3のオンボードサウンドが、そのどちらかに対応しているのか? ということなんですが、無事「Dolby Digital Live」に対応していることを確認できました。最初はいくらやってもダメだったんですが、オーディオドライバをギガバイトのサイトにある最新版に変更したらOK。

なお、Z68X-UD3HはDolbyのみでしたが、ALC889自体はDolbyにもdtsにも対応していて、どちらが使えるかはマザーボードメーカーの設定次第ということです。  とりあえず、メーカーサイトからドライバ落とすのが良いと思われ。

「SKYRIM」でオンボードサウンドの光デジタル5.1chサラウンドを試してみた-ものろぐ

 というわけで結論としては、まず最初は自分の環境でDD Liveなどが使えるのか確認し、ダメならドライバの更新。それでもダメなら対応M/Bへの買い替えや対応サウンドカードの追加などを検討する、という手順を踏むのがいいと思われる。
 なお、具体的なサウンドデバイスの選択肢としては、例えば以下のようなものがある。

   

 上の4種類の中では、「Sound Blaster ZxR」「Sound Blaster Zx」「Sound Blaster Z」の3種類がDD LiveとDTS CONNECTの両方に対応。「Sound Blaster Omni Surround 5.1」はDD Liveのみの対応にとどまるが、その代わりにUSBオーディオなので拡張カードが追加できないノートPCでも利用できるなど、他と違ったメリットがある。
 基本的にはDTSの方が音質的には優れているはずだが、人によって予算や環境は当然異なるため、自分にあっているものを選ぶのがいいだろう。

接続するだけなら簡単だが、サラウンド環境を整えようとすると難しいS/PDIF

 PCゲームとS/PDIFの取り巻く環境について一通り説明してきたが、DD Liveなどの対応状況のチェックやドライバの更新、さらにはサウンドカードの新調など、何かと面倒な作業が多いと言わざるを得ない。特にPCの知識に乏しい人は、マザーボードにしろサウンドカードにしろ、仕様一覧を見て理解するのだけでも大変かも知れない。さらにDD Liveなど機能は、多くの人が必要としているものでもないため、採用ハードがあまり多くないという問題もあるのが現状だ。

 しかし、これは最初に書いたように、そもそもS/PDIFという規格の帯域不足に起因している問題だ。ある意味ユーザとしてもメーカとしてもどうしようもないところなので、ある程度の諦めは必要なのかもしれない。

PC環境における、HDMI接続での5.1chサラウンド

HDMI端子
一般的なHDMI端子

 PC界隈においてHDIMはDVIの単なる代用、つまり「映像を伝送するための端子」と思われてい時期もあったが、ご存じのようにAV機器と同じように音声も出力できる。音声出力の面からみたHDMIのメリットとしてはS/PDIFに比べ伝送帯域が広いため、リニアPCMでも5.1ch以上の音声がそのまま送ることができるのが大きい。

 具体的には、HDMIのバージョン1.1以上から最大8ch(7.1ch)、2.0から32chの音声出力までサポートするようになった。つまりHDMIならDD LiveやDTS CONNECTで音声を圧縮しなくても、そのままAVアンプに5.1ch以上のサラウンド音声も伝送することができる。ハードやドライバの対応状況を気にしなくて良いというのは、もちろん大きなメリットだ。

 しかし、残念ながら問題もある。HDMIは比較的新しい規格なので、古いホームシアターシステムでは光デジタル(S/PDIF)入力しかなくHDMIに対応していない可能性がある。また、HDMI出力に対応したサウンドカードは選択肢が非常に少なく、特にオンボードサウンドでの対応は絶望的と言ってもいい。
 結果として現状ではHDMI単体で音声のみを送ることができないため、「HDMI経由で音声を出力するには、基本的に音声と映像が必ずセットにならざるを得ない」ということになるのだが、これが色々とトラブルを発生させるのだ。

HDMIで音声を出力するにはビデオカード側の音声デバイスを使う

 見出しのようにHDMI経由で音声を出力する場合は、ビデオカードに内蔵された音声デバイスを使うことになる。AMD(ATI)なら「AMD High Definition Audio Device」、NVIDIAなら「NVIDIA High Definition Audio」という名称になっていて、適切にドライバがインストールされていれば勝手に使用可能になっているはずだ。Windowsでの具体的な設定方法は以下のページがわかりやすい。

 上はFF14のページだがゲームの情報ではなく、画像入りで一般的なWindowsの設定手順が書かれている。下はノートPCをHDMIでAVアンプに繋いだ体験談が書かれていて、どちらもかなり参考になるはずだ。

 なお余談になるが、かつてNVIDIAのGeforceは音声デバイスを内蔵していなかったが、現在はそのような仕様ではなくなっている。古いページだと「オンボードやサウンドカードのS/PDIFを別途ビデオカードに繋ぐ必要がある」と書いてあったりするが、現行のカードには当てはまらないので気をつけよう。

「間にAVアンプが挟まる」と何が起こるのか

 上でリンクを貼ったFF14のページでは単に「HDMI機器に接続」と書いているが、実際に接続するのはHDMI対応のAVアンプになる。当然そのままだと「音」しか出ないので、モニタにも接続しなければ話にならない。具体的にはもう一本HDMIケーブルを用意して、AVアンプのHDMI出力とモニタのHDMI入力(あるいは変換ケーブルなどを使ってDVI)に接続する。つまり以下のような接続形態だ。

PC→[HDMIケーブル]→AVアンプ→[HDMIケーブル]→PCモニタ

 AVアンプが一種の「ハブ」のように挟まることになるが、これによって次の問題が発生する可能性がある。

  1. AVアンプの電源を入れないとPCモニタが写らない
  2. AVアンプの入力を切り替えるとPCモニタが消える
  3. モニタの「遅延」の発生

 1.はAVアンプに「スタンバイスルー」機能が付いていれば問題ない。これはアンプの電源がoff(スタンバイ)状態でも入力されたHDMIの信号をそのままスルーしてしてくれるもので、逆に言えばこの機能がなければ「電源を入れない限りモニタに信号が届かない」(だから写らない)ということになる。最近のAVアンプでは多くが対応しているが、古いモデルだと対応してないものも珍しくないようだ。

 対応してない場合は画面を表示するためだけにアンプの電源を入れる必要があり、昨今の省エネブームから考えるとあまり好ましくない。電気代以外にも、PCはテレビと違い書類作成やWebブラウジングなどなら音声の出力は特に必要とされないのだから、本来は不要なはずの機器を通さないとPCが使えなくなってしまう。

 2.は1.と似たような話になってしまうのだが、アンプの入力切り替え、例えば「アンプに繋げた別の機器を使うために入力を切り替える」というような作業を行うと、そこで信号が途切れ画面が消えてPC自体が使えなくなる可能性がある。アンプの仕様にもよるが、他のHDMI入力を使うとほぼ確実に起こってしまうだろうし、これだといくら入力端子があってもアンプは「PCで占有」されてしまうことになる。
 その点、例えばS/PDIFで接続しているなら画面への映像出力は完全に独立しているから、PCを使いながらでもアンプ側で別の機器を普通に使用することができる。これはS/PDIFを使うときのメリットとなるだろう。

 3.の「遅延」とは映像が本来より微妙に遅れて(ズレて)表示される現象を指す。単に映像を見るだけならそこまで問題になることはないものの、ゲームで特にFPSやアクションなどをプレイするなら、直接プレイ感にも影響を与える重要なポイントだ。
 また、PCは多くの場合にゲームにだけ使われるものではないから、日常のPC作業のときも遅れが発生してしまうことになる。

 通常はこのような表示の遅延は、入力された映像のアップスケール(拡大)処理などをおこなうと顕著に発生して、逆に単に信号をスルーするだけなら遅延はほとんど発生しないとも言われている。しかし実際どうなのかは、使っているAVアンプを接続して試してみないとわからない。例としていくつかアンプによる遅延について触れられているページへリンクを張っておくので、参考にして欲しい。

 HDMI接続での弱点をまとめれば、AV機器では多くの場合メリットになりうる「映像と音声が1本のケーブルで送れる」という仕様が、PC環境だとむしろデメリットになってしまい、取り回しが悪くなってしまうことだと言える。「音が出ないテレビ」というのはまずないが、「音が出ないPC」(出す必要がないのでスピーカが取り付けられてないPC)というのは普通にあるわけで、音声のためだけにPC自体の使い勝手自体が悪くなってしまうのに耐えられない人は多いのではなかろうか。

 つまりはHDMIはS/PDIFに比べれば帯域が広くて規格上の制限がなくなった反面、PCで使うと映像と音声が切り離せなくなった影響で、物理的な制限がでてしまうシチュエーションがあるわけだ。

HDMIで音声を出力するための「もうひとつ」のルート

 HDMIで音声をアンプに出力したい場合に、映像をアンプに経由させない方法も存在はする。それはHDMIケーブル1本を音声出力専用としてアンプに繋ぎ、それとは別に映像をDVI端子や別のHDMI端子で直接モニタに送る方法だ。つまりビデオカードに2本のケーブルを繋ぎ、片方はモニタに、もう片方はアンプに繋ぐ。
 具体的には以下のような形になるだろう。

PC→[HDMIケーブル]→AVアンプ
└→[DVI(HDMI)ケーブル]→PCモニタ

 一見「HDMIケーブルをS/PDIFケーブルの代わりに使う」ような形であるため、今までの問題が全部解決したように見えるが、実際は事情が異なる。以下のような問題があるため、環境によるが必ずしも使い勝手が良いとはいえない。

  • ビデオカードのHDMI出力に空きがないと使えない
  • 使っているのはビデオカードの出力なので、例えモニタは1台でも出力は2系統になってしまい、OSやドライバからは「マルチディスプレイ扱い」になる
  • ディスプレイ出力方式は「クローン(ミラー)」が一番影響が少ないが、それでも3Dのパフォーマンスが低下したり、アイドル時にビデオカードのクロックが落ちなくなることが珍しくない
  • 映像にOFFにして音声だけHDMIで出力できれば問題ないが、これもできない環境がほとんど。「HDMIの音声のみの出力」に対応していないため、映像出力を切ると同時に音声も停止してしまう

 結論としては、規格上のスペックは申し分ないHDMIも音声伝送専用のケーブルとして使うことは考慮されておらず、特にPCでの使用時には問題が発生しやすい。アンプを経由する方法にも、デュアルディスプレイにする方法にも両方に弱点が存在する。HDMIを使うつもりなら両方試してみて、自分の環境で悪影響が少ない方を選ぶのがベターかもしれない。

最適解は恐らくない「PCゲーム+ホームシアター」の接続方法

 今までの話を簡単に総括すると以下のようになる。

アナログ出力でサラウンド

 マルチチャンネルに対応したアナログ出力さえあればハード・ソフトとも制限はほぼないが、そもそもAVアンプ(ホームシアター)には2chでしか繋がらないのでどうしようもない。

S/PDIF出力でサラウンド

 帯域不足が原因でそのまま5.1ch音声が流せない。そのため、Dolby Digital Live / DTS CONNECTへの対応がソフト(ドライバ)・ハードの両面で必要とされる。対応してないなら追加投資が必要。

HDMI出力でサラウンド

 帯域は十分あるので、アンプ側がマルチチャンネルリニアPCM(≒HDMI入力)に対応していれば、そのまま5.1ch環境にできる。
 しかし、アンプを経由する関係でPCの使い勝手が悪くなることがありうるし、遅延の問題が発生する可能性もあるので、実際に機器を用意して接続してみないとわからないことが多い。端的には、アンプの仕様にPC環境全体が左右されるようになってしまう。

 また、いちおう「映像をアンプに経由させない」方法もあるが、それはそれで扱いがマルチディスプレイになるなど、別の問題が発生する。

 というわけで、そもそもAVアンプに繋がらないアナログを除けば、S/PDIFとHDMIはどちらも一長一短という感じになりそうだ。「ゲームするときしか使わない・起動しないPC」なら遅延問題を除けばHDMIに軍配が上がるように見えるが、そうでなければどちらを選ぶかは悩ましい選択になるかもしれない。