格安ゲーミングキーボード iBuffalo「BSKBC02BK」レビュー

一か月ほど前、長年使用していたキーボードが壊れてしまった。特に有名でも高いわけでもない単なる古い富士通製のPS/2フルキーボードだったのだけど、使い慣れていて変える気も起こらず、前に壊れたときも同型を手に入れてまた使うぐらいだった。しかしさすがに2012年ともなると新たに手に入る気配もなく、また予備のキーボードは激安のやつでキータッチが悪く長い時間使ってられないので、Amazonで適当なもの見繕ってみることに。

iBUFFALO ゲーミングキーボード USB&PS/2接続 ブラック BSKBC02BKiBUFFALO ゲーミングキーボード USB&PS/2接続 ブラック BSKBC02BK

買ったのはBuffaloの「BSKBC02BK」というキーボード。カテゴリとしては何かしらの“こだわり”や“売り”が必要とされるゲーム(ゲーミング)用途のキーボードなのだが、実売価格はAmazonで1500円前後と「格安」と言っていい価格帯の製品。各種のレビューを見ると結構評判が良く、売れ筋のキーボードでもある様子。早速ゲット&使用してみる……となったのが一か月前。そろそろ評価も固まってきたので、例によってレビューしてみたい。

ただ最近はPCでゲームをすることはほとんどないため、個人的には文章入力でしか使用していない。つまり今回の記事では基本的に「文字入力用途」のレビューでしかないので、そのあたりは事前にご了承のほどを。

「キーボード=ワンコイン」時代の“中途半端”なキーボード

先ほど1500円のキーボードを「格安」と表現したが、相対的な価格で見ればそこまで安いわけではない。無線接続や(今回のような)ゲーミング用途でもなければ、ワンコイン、つまり500円程度で買える(AA)キーボードは何も珍しくない。単に安さを求めるなら迷わずこういう商品を買えばいいだけなのだから、たかが1500円とは言え「何かのプラスアルファ」がなければ約3倍の値段にもなる「BSKBC02BK」を選ぶ理由はなくなってしまう。

個人的にわざわざこれを選んだ理由は以下の三つ。

  1. 耐久性
  2. キータッチ
  3. 押下音

1.は言うまでもなく安価なキーボードは中のスイッチ部分も安いため、耐久度が低く壊れやすい場合が多い。もちろん安いだけあって買い替えれば良いとも言えるのだが、そうなると無駄にゴミは増えるし、メインで常用するキーボードならある程度の耐久力が欲しいところ。公式サイトによると約500万回のキー入力に耐える部品を使用しています。* とのことなので、売り文句を信じるなら価格のわりに長く使えそうだ。

2.も同じようなもので、経験上激安系キーボードは「変に硬くて押しづらいわりに、使い続けるともろい」というものが多かった。個人的には「ある程度柔らかくて押しやすい」という疲れづらいタイプが好きで、ネットで評判を調べたところこれが近そうな感じだった。

3.も好みの問題になるのだが、タイプしているときに大きく「カチャカチャ」というような音がするキーボードはあまり好きではない。最良はそれこそ「無音」なのだが、それは期待できないにせよ、評判としてはそんなにうるさくなさそうという印象を持った。

では上記が達成できたかを含めて、具体的なレビューに入りたい。

BSKBC02BK - 基本スペック

「BSKBC02BK」は一般的なメンブレンタイプのUSB&PS/2 109キーボードで、左右にあるWindowsキーも含めて極めてスタンダードな作りになっている。特殊なホットキーやマルチメディア系のキーは何もないが、いちおうゲームプレイ時のモード切り替え用として小さな「Mode」というボタンが右上にある。ただ本当に小さくて邪魔にならないので、間違えて押すことはまずないだろう。(ちなみに文章入力に使う限りは、このボタンを利用する機会はまったくない。)

USBとPS/2の切り替えは良くある変換コネクタータイプで、USBで使う場合はそのまま、PS/2で使うときは変換コネクタを接続する。ちなみに本体以外の付属品はこの変換コネクターのみ。テンキーはもちろんありで横幅441mm・縦幅136mmと飛び抜けてコンパクトとは言えないが、キーの周囲がかなり切り詰めてあるのである程度の小型化は計られている。見栄え的にも単なる黒いキーボードで「普通」としか言いようがないのだが、かな刻印が存在せず文字はすべてアルファベット(ローマ字表記)か記号になっているあたりが特徴になるかもしれない。

BSKBC02BKの刻印画像
BSKBC02BKの刻印画像。「日本語」がまったく書かれていない。

これはローマ字入力を使っていて、かつキーボードを使うのに慣れている人には別に問題なさそうだが、刻印されてるフォントの独特さもあってPC初心者には向かないのではと感じた。なにせ「変換」や「全角/半角」という文字すらローマ字か記号なので、場合によっては画面の操作手順やヘルプなどの記載と食い違って迷う可能性も考えられる。特に「文字を打つときには必ずキーボードを見ながら打つ」という人には大きな問題になりそうだ。

なおゲーム向け機能として「複数キーの同時押し(同時認識)」や「連射機能」なども用意されているが(前述の「Mode」ボタンはこれに使う)、最初に書いたようにゲームには使用していないので評価はできない。気になる人は以下の公式ページでチェックしてみて欲しい。

キータッチ、押下音、使い心地など

キータッチは想像以上に良かったというのが最初の感想。個人的な好みと違って「柔らかい」方には恐らく入らないレベルで、以前使っていたものより若干硬いのだが、それでも長時間打っていても指に負担などは特に感じない。激安キーボードのように変に硬すぎることもなく、少し力を入れれば「スッ」とキーが押されていくあたり、以下の公式ページの売り文句も誇大広告ではなさそうな感じだ。

BSKBC02BKのキー部分の仕組み
キー部分の仕組みの画像。公式サイトによるとどの位置からキーを押してもキートップがぶれにくくなっています。* とのこと。

キーストロークは4mmとデスクトップ用キーボードとしては普通で特筆することはないが、普段ノートPCの浅いストロークのキーボードに慣れていると若干深く感じるかもしれない。

押下音は少し表現しにくいが、小さい音で「カスッ」や「スッ」という音が近いかも知れない。無音とは言えないが決してうるさい方ではなく、静かな方に入るのではないかと思う。ただ早めに調子よく打っていると戻って来るときに「カチャカチャ」という音もするので、タイピングの仕方によって音が結構変わってくるという印象。

全体的な使い勝手として良かったのが、「ある程度どっしりとした重さ+四方(チルトスタンド)にきちんとゴムの滑り止めがある」という点。ゲーム用途ということで激しく押されることが考慮されているらしく、安いキーボードにありがちな「異常に軽い+滑り止めが手前にしかついてない」のコンボで勝手に動いてしまうようなことが少ない。内部に別途重りなどが配置されているのかもしれない。

接続はUSBとPS/2の両方で試してみたが、両者に明確な差は(少なくとも文章入力では)感じなかった。Amazonのレビューだと「USB接続だとうまく動かない!」というレビューがいくつか寄せられているのだが、自分のWindows 7環境では特に再現はしていない。単なるキーボードなのだからそんなに相性があるとは考えにくいのだが、PC環境やインストールされているソフトでトラブルが起こることがあるのかもしれない。

「ここがちょっと気になるな……」というところ

全体的に不満は少ないのだが、気に入らなかった/困った点が二つほど。

一つはスペースキーの幅が狭いことで、ホームポジションに手を置くと実質的に左指でしか押すことができない。自分のタイピングスタイルは、打つタイミングに合わせて左右両方の親指でスペースキーを押すような使い方をしていたのだけど、これができなくなってしまった。右親指を今までどおりに押下すると、変換キーが誤爆してしまう。(キーボード上は日本語表記がないので、矢印マークになっている。)これは一か月以上使用して左手のみの使用に慣れてきたものの、未だに誤爆してしまうことがあり、若干のストレスになっている。

もうひとつは「黒キーボード+キーの刻印がアルファベットのみで地味」という作りのせいで、キーの刻印が見えにくい場合があること。特に部屋が暗かったりすると、かなり目をこらさないと文字が見えないことがある。このあたりはデザイン性を優先したのだろうが、実用性の点からみると弱点であるように思う。

というわけで「スペースキーを右手でも使いたい」とか「タイピングに慣れてないので刻印を見ながらでないと打てない」という人には、恐らくこのキーボードは向かない。両方とも慣れの問題ではあるものの、気になるなら別の商品にした方がいいのではなかろうか。

「ゲーム用」でなくてもコストパフォーマンスが高い一品。「激安キーボード」で満足できない人は一考の価値あり

「ゲーミングキーボードなのにゲームで使うことを一切考慮しない」という少々変わった視点でレビューしたが、そのような「普通に使うキーボード」として見ても買って損はなかった商品だと感じた。売りの一つである耐久性は長く使ってみないとわからないが、キータッチや全体の作りは十分満足できるものだった。実際問題として500円程度のキーボードは値段相応の安っぽい作りであることがほとんどなのだが、それと比べれば数ランク上の作りに見える。少なくともAmazon購入時の価格である1500円程度なら、それ以上の価値は間違いなくありそうだ。

もちろん不満点もある。前述のようにスペースキーは短いし、日本語の刻印が一切ないので初心者には勧めづらい。またその刻印のフォントや表記自体も個人的に見やすいとはあまり思えない。まあこれは「設計思想がゲーミングキーボードだから」という事情なのだろうけど。

ただマイナス要素を考慮しても、今の価格ならこのキーボードのコストパフォーマンスは恐らくかなり高い。特に無駄な追加キーを一切排除している点はシンプルかつ実用的で、ゲーミングキーボードながらゲームをしない人にも普通に勧められる出来となっている。もちろん値段が値段だけに過度な期待は禁物なのだが、個人的には「安めのキーボードで十分だが、極端に安っぽいのも嫌だ」という人には十分に検討に値する製品だと感じた。しばらくこれをメインキーボードとして使っていこうと思う。

余談:Amazonのフラストレーションフリーパッケージ(FFP)について

Amazonでこの「BSKBC02BK」を購入したとき、通常版とフラストレーションフリーパッケージ(FFP)版(こちらは型番が「BSKBC02BKF」)はまったく同じ値段だった。通常Amazonで買った商品は大きいものではない限りダンボールなどで梱包されて送られてくるが、FFP版は単品で発送される場合は梱包されず、個装箱にそのまま伝票を貼り付けて送ってくる。(これは個別商品ページにも書かれていて、詳細はヘルプにも記載されている。)

これだけなら中身は変わらないので別に問題はないのだが、困ったことにAmazonに限らず、通販で買ったものは輸送時に落下などによってダメージを受けることがある。要は届いた時点で箱が汚れていたりへこんでいることがあるのだけど、それがFFPだとダイレクトに商品の箱と中身を痛めつける可能性があるというわけ。

もちろんキーボードはそこまで繊細な精密機械ではないので、致命的なことになるとは思えないが、もし気になる場合は通常パッケージ版を選ぼう。きちんとAmazonの箱に入れられて発送される。価格が同じならFFP版を選ばなくても購入側の不利益は何もないので、この商品に限らず梱包の話として覚えておくといいかもしれない。