Seagate ST2000DL003を買ったのでレビュー

デスクトップマシンのシステムドライブを更新したかったので、安価で速度もそこそこと思われたSeagateの「ST2000DL003」を購入した。コストパフォーマンスやエコ性能で人気HDDといえばWestern Digitalの「Caviar Green WD20EARS」(AA)あたりが非常に有名なものの、省エネに特化したせいかシステムドライブとしては速度とレスポンスが不安だったのでこちらを選択。

Seagate Barracuda Greenシリーズ 3.5inch SATA 6Gb/s 2TB 5900rpm 64MB 4Kセクター ST2000DL003Seagate Barracuda Greenシリーズ 3.5inch SATA 6Gb/s 2TB 5900rpm 64MB 4Kセクター ST2000DL003

基本スペック

  • サイズ - 3.5インチ
  • 容量 - 2TB
  • インターフェース - SATA 3 (SATA 6Gb/s)
  • 回転速度 - 5900rpm
  • キャッシュ - 64MB
  • Advanced Format Technology(AFT)採用 (物理セクタ4KB)

XPでは物理セクタの問題で速度が落ちてしまうAFT(Advanced Format Technology)採用、キャッシュ64MBと前述のWD20EARSと同じ部分もあるが、SATA 3対応で回転速度が5900rpmと若干パフォーマンス寄りの製品であることがわかる。また、実はAFT採用ながらデータドライブに使う限りはXPでも速度が落ちないという特徴もあり、古めのPCやOSを使っていても安心して増設できるのが嬉しいところ。(詳細は以下参照。)

ただ今回HDDを組み込んだ環境のOSはWindows 7なので、特にこの機能の恩恵にあずかることはなかった。

パフォーマンスとレスポンス

CrystalDiskMarkで取ったベンチマーク結果は以下のとおり。接続はM/Bの関係でSATA 2、OSはWindows7 64bitで計測。ただこちら事情でHDDが空の状態ではベンチが取得できなかったので、(完全に空のHDDで計ったものに比べて)若干パフォーマンスが落ちている可能性がある点に注意。

ST2000DL003ベンチ結果
ST2000DL003のベンチ結果

次に比較対象として、同じSeagateの以前のモデルである「ST31500341AS」とWestern Digitalの「WD20EARS」の結果を。ただ上と同じように空の状態で取得できなかったことにくわえ、WD20EARSの方は容量が半分以上埋まった状態だったので、かなりベンチ結果が奮っていないことを先に書いておきたい。

ST31500341ASベンチ結果
ST31500341ASのベンチ結果(1.5TB 7200rpm SATA 2 キャッシュ32MB)

WD20EARSベンチ結果
WD20EARSのベンチ結果(2TB 5400rpm SATA 2 キャッシュ64MB)

容量をかなり使ってしまっているWD20EARSを除外するとしても、ST2000DL003は5900rpmながらシーケンシャルアクセスなら数年前の7200rpmモデルよりさらに速いHDDであることがわかる。実際に使っていてもストレスを感じることは別になく、7200rpmモデルから乗り換えてもまったく問題ないと感じた。また、WD20EARSで時折感じるレスポンスの悪さ(時間をおいてアクセスすると、一瞬止まるような動作をする)もなく、エコモデルであることを感じさせないのもよかった点のひとつ。

発熱と騒音

発熱量についてはエコモデルだけあってかなり低く、CrystalDiskInfoで室温24度程度で同一PCに組み込んだWD20EARSと比べたところ、以下のようになった。

  • ST2000DL003 - 36度
  • WD20EARS - 34度

実際にベンチマーク中に触っても熱いと感じることはほとんどなく、WD20EARSより若干暖かいと感じる程度。以前使っていたSeagate製のHDDに比べると、段違いに低発熱になっている。(昔使っていたBarracudaシリーズは、フルアクセスを続けると素手で触れないほど熱くなるものもあった。)もちろんHDDの温度自体は室温の上下によって変わってくるが、定期的にチェックしたところ「WD20EARSの+2~4度」あたりに収まっていたようだった。

気にする人も多いアクセス音などの騒音は耳障りに感じることもなく、バラックのむき出し状態で耳を近づけるとある程度聞こえるぐらい。ケースに入れてしまえばほぼ聞こえないと言ってもいいほど。これもWD20EARSに比べると多少音が大きい気がするが、「静音」といってまったく問題ないレベルだと個人的には感じた。

総評 - 次の「定番HDD」となる可能性を秘める製品

まず実際に使ってみて、このHDDはシステムドライブとして使っても「全然問題ないパフォーマンスを持っている」と言える。もちろんSSDに比べれば遅いが、それでも「バイト単価が高いSSDよりHDDを選びたい」という場合なら十分な選択肢になり得るはず。2TBはシステムとしては大きすぎるのでパーティションを切っているが、残りをファイル置き場として使っても特に問題は感じていない。

公式ページにスピードを損なわないと書いてあるだけあって、速度性能をあえて下げてエコ性能を重視したWD20EARSに比べ、こちらは全体的なパフォーマンスを上げた作りになっている。もちろんそれだけ発熱や騒音は若干上昇しているように思えるが、そのあたりは好みや用途の問題になってしまうだろう。少なくとも個人的にはこっちの方が好みだとは言える。

また、WD20EARSの人気の理由として安いというのがあるが、価格面でもほぼ変わらず執筆時点(2011年5月現在)で6000円前後で買えた(Tsukumo)のは大きな強みで、シンプルに「安いHDDが欲しい」という場合にも十分おすすめできる。

SSDと違い回転部を備えるHDDは、多くの場合に性能と発熱・騒音・消費電力(エコ性能)はトレードオフの関係にある。つまり「回転速度を上げればパフォーマンスは上がるが、その分発熱と騒音が大きくなるし、消費電力も増える」ということ。その点ST2000DL003は、7200rpm(一般的な3.5インチHDD)と5400rpm(2.5インチHDDやWD20EARSなど) の中間の速度を採用し、エコ性能とパフォーマンス、そして価格のバランスが取れたかなりお買い得なHDDになっていると感じた。個人的にも追加のHDDが必要になったら、もう1台これを買い足す予定でいる。