新しいHDDを入手したので、今まで使用していたものを手放すことにした。完動品なので捨てる以外にも売ったりあげたりできるけど、当然「そのまま人手に渡す」というわけにはいかない。データ流出リスクを考えれば消さないのは論外だし、消すにしてもただフォーマットするだけではサルベージされてしまうかもしれない。
こういうときに使うのがいわゆる「HDD消去ツール」で、単体で売っているものもあれば、ユーティリティ系のソフトに統合されて付いていたりもする。個人的にはもうその手の総合ユーティリティソフトを使わなくなって久しいので、フリーでシンプルな「データを消すだけ」のソフトを探したところ、見つけたのが以下のソフト。
今使っているOS(Windows)上からアプリケーションとして動かすタイプではなくて、OS(linux)とデータ消去アプリケーションがセットになっていて、CD-RやUSBメモリにイメージを書き込んでそこから起動するタイプのもの。今回は試してみなかったが、HDDに限らず様々なストレージも消去することができるらしい。
使ってみたのはCDイメージタイプで
- ISOイメージをダウンロード
- 各種ライティングソフトで書き込み
- ディスクを入れてBIOSでFirst bootをCDドライブにする
という手順で簡単に起動することができる。USBイメージも用意されているが、自分が試した限り、CDドライブから起動した方が安定していると感じた。(ISOイメージをUSBメモリに書き込んでUSBブートできないかとフリーソフトなどを使って何度か試してみたものの、自分の環境では正常に起動しなかった。)
使ったのは執筆時点で最新版のVer.1.1で、開発版と銘打ってあるが、起動にちょっと手間取った以外は(後述)なんの問題もなく安定して使用することができた。この手のソフトは日本語化されてないものが多い中で、起動してしまえば完全に日本語表記(日本語の選択肢をキーボードで選んでいくだけのもの)になるのは大きなメリットじゃないかと思う。付属のヘルプテキストを読む限り英語メニューのように読めるが、ヘルプ自体が古いのか実際は全て日本語になっている。
VirtualBox上で起動したwipe-outの起動画面。あとはキーボードで選択していくだけ。
とはいえ操作ミスや勘違いが起こらないとも言い切れないので、万全を期すなら念のため消す予定のHDD以外は外しておくのがよりベターだろう。
消去機能と手順
消去方法としては以下の4種類の中から好きなものを選ぶことができる。
- 「0」を上書き
- 「1」を上書き
- ランダムデータを上書き
- MBRのみ削除
データを消したい場合に4は意味がないので、1から3のどれかを選択することになる。3のランダムデータには「ランダムパターン」「ランダムデータ」「補数」があって、作者のページで以下のように説明されているので、好きなパターンを選ぶ。
【ランダムパターン上書き・補数パターン上書き】
従来からのランダムデータ上書きに加え、 ランダムパターンおよびその補数の上書き機能をサポートしました。 なお、ランダムデータ書き込みでは、 ディスクの各セクタに、乱数で生成した異なるデータを書き込みます。 一方、ランダムパターン書き込みは、 乱数で生成した1kバイト長のデータを繰り返しディスクに書き込みます。 「ランダムデータ」と「ランダムパターン」の違いは 書き込まれるデータに1kバイトの周期性があるかどうかです。 補数パターンの書き込みでは、 直前に使用した1kバイト長のパターンの補数を 繰り返しディスクに書き込みます。
メニューの中には「念入り消去」という項目もあって、これは複数回の繰り返し消去処理をまとめておこなうもの。最大で15回も上書きすることができるので、「数回程度じゃ安心できない!」という場合に使うことができる。とはいえ当然(特に近年の大容量HDDなら)それだけ時間がかかるし、JEITAのガイドラインでも以下のように定められているらしいので、通常なら「2回もやれば十分すぎるぐらい」ではないかと思う。
社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の「パソコンの廃棄・譲渡時におけるハードディスク上のデータ消去に関するガイドライン」では、データ消去の有効な方法として、「1回固定データによる塗りつぶし消去を行えば十分だが、2回消去を行えば一般的に完全といえる」と述べているように、固定データを2回書き込む程度で十分だろう。
消去作業を始めると進行状態がパーセンテージで表示され、推定終了時間もリアルタイムで計算される。近年のTB(テラバイト)クラスのHDDだと内蔵型でも本当に時間がかかるので、「寝る前に消去作業を始める」ぐらいでちょうどいいかな、というのが個人的な感想。
消去が完了したHDDは
消去が終了したHDDは購入した直後のような「何も設定されてない」状態になる。ファイルやパーティション情報はもちろん完全に消滅しているので、再度使いたい場合はボリュームやパーティションを再度設定してフォーマットし直せばOK。
各種トラブルに関して
「wipe-outが起動しない!」という場合
所有のPCで最初にwipe-outをCDブートで使ってみようとしたところ、なぜか起動しないトラブルが発生。正確には「wipe-outが起動する前にFreeBSDの起動が(以下のように表示されて)止まってしまう」という状態に。
run_interrupt_driven_hooks: still waiting after 60 seconds for xpt_config
run_interrupt_driven_hooks: still waiting after 120 seconds for xpt_config
(以下続く)
孫引きになってしまうが、調べたところオンボードのIEEE1394(FireWire)デバイスが原因らしい。
上の記事と同じように1394 ControllerをBIOSでDisable(OFF)にしたら、正常に起動するようになった。
起動途中で表示される選択肢はどうすれば?
少し待っていれば自動的にデフォルトの選択肢が選ばれる。前述の起動画面が表示されるまで放っておくのが吉。別の選択肢は正常に起動しなかったり、起動したあとに画面が乱れるなどの不具合が発生したときに改めて試せば十分。変な選択肢を選んでしまうと、逆に正常に動作しない原因になる。
「接続したHDDが(wipe-outから)認識されない!」という場合
BIOS(UEFI)でストレージの扱いが「AHCI」や「RAID」になっていると、BIOSやWindows上ではHDDが正常に認識されているのに、起動したwipe-outからは認識できないことがある。こういうときはBIOSでストレージの設定を「IDE(IDE互換モード)」に変更しよう。これできちんと認識できるようになる可能性がある。なお、消去作業が終わったあとは設定を元に戻しておくことをお忘れなく。
以上、同じトラブルにあった人がいたら、参考になるかもしれない。
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